長澤まさみが会見で使った方言「ちんぷりかえる」って?

芸能

更新日:2012/8/22

 上京して時間も経ち、標準語にすっかり慣れたつもりでいても、とっさの瞬間に、つい出ちゃう方言。お盆やお正月で帰郷して、方言にどっぷり浸かってきたあとなんかは、とくに危ないかもしれない。8月7日にポプラ文庫から出版された『とっさの方言』(小路幸也、大崎善生)では、辻村深月有川浩など64人の人気作家が、そんな全国の方言にまつわるエッセイを綴っている。

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 山梨出身の辻村深月が紹介する方言は、「くじら」。自身の作品である『凍りのくじら』(講談社)のタイトルにもある言葉だが、まさかちがう意味が込められていたとか? と思いきや、これは意味ではなく、アクセントのお話。実は、山梨ではすべての言葉ではないが「ぶどう」や「いちご」などの3文字の言葉に対して、頭にアクセントを置くそう。だから、両親が「く(・)じら」と頭にアクセントを置いて自分の作品を呼ぶことに怒りを感じ、自分は絶対に使っていないと思っていた。しかし、そんな辻村も気づかずに使っていた3文字言葉とは?

 万城目学は、大学卒業後に就職した化学繊維会社で配属された静岡の工場で、強面の上司が使っていた「っち」という方言に関するエピソードを綴っている。顔に似合わず、部下のことを「今川っち」などとかわいらしい名前で呼ぶ上司に、いつか自分も「マキメっち」と呼ばれる日が来るのかと期待していた万城目。しかし、その本当の意味は……?

 他にも、有川浩が久しぶりに高知の実家に帰ったとき、弟が発した「何しよらぁ、おんしゃあ!」という怒号や、絲山秋子が教える群馬の「行ってみる」の意味。昔、西加奈子が大阪で手伝っていた喫茶店に流れていた「いちびり」な空気や、山崎ナオコーラの母親の実家である福岡の「すかん」など、地元民でなければわからない方言もたくさん! 気になる方言は、ぜひ読んで確かめてみて欲しい。

 言葉を聞いただけでは何がなんだかさっぱりといった感じで、頭にいくつも「?」が浮かんでしまうような方言だが、そんな方言にも由来や特徴がきちんとある。この本ではエッセイの他に、その由来や地方ごとの特徴についても記されている。

 また、最初に挙げた「ちんぷりかえる」は静岡の方言で、長澤まさみも会見でつい使ってしまったというもの。「ふてくされている」「むすっとしている」といった意味なのだが、とっさには共通語に直せないし、代わりになるようなしっくりくる共通語も思いつかない。そんな時についつい出てしまうのが方言なのだろう。どの地方でも小さい頃から聴き馴染んで染み付いた方言。そんな方言を、くすっと笑えるエッセイと共に楽しんでみては?