劣等感、嫉妬心…“女の怖さ”を描いたヤマシタトモコの最新作

マンガ

更新日:2012/8/23

 Perfumeのかしゆか、二階堂ふみなどマンガ通の芸能人たちも愛読を公言するなど、いま乗りに乗っているヤマシタトモコ
そんなヤマシタの最新作は、“女の怖さ”を存分に描いている。主人公は14歳の少女・手島日波里。日波里は、同い年の女の子より色っぽい体つきをしている。そのせいで男子からは性的な目で見られ、女子からは反感を買う……。

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 8月8日に発売された『ひばりの朝』(祥伝社)はそんな日波里を、周辺の男女の目を通して描く連作形式の作品だ。胸を抉るような心理描写に定評があり、多くの人をひきつけるヤマシタトモコが手がけるこの作品には、いろんなタイプの“女”が登場する。あなたはそんな彼女たちが見せる“女の怖さ”に耐えることができるか?

 まずクラスメイトの美知花は“女の怖さ”と聞いて誰もが思い浮かべるような、親友のフリをして相手を見下すタイプの女の子だ。
クラスで浮いている存在の日波里にも優しく声をかけ、さりげなく「もしかして今悩みとかある?」と問いかけて信頼を得たりもするが、実際は相手を見下して「ミツのアジ」を貪っているのだ。心の中では「ね 消えて? ていうか死んでくれたらまじうける」なんて思いながら、いい人キャラを演じる。そんな美知花の心の声を聞くたび、男子は震え上がってしまうかも。

 しかし、誰もが彼女のように相手を見下せるような恵まれた“女の子”というわけではない。男っぽくて女として見てもらえないことにコンプレックスを抱いていた富子が持つ“女の怖さ”は、ドロドロとした嫉妬心だ。富子は自分とは違う価値のある女の子に劣等感や嫉妬心を抱き、自分に対して「イケメン」「男前」「富子が男だったら付き合う」なんて言う彼女たちにうんざりしていた。そんな富子も初めて自分のことを「かわいい」と言ってくれた完と7年も付き合っていたのだが、完のいとこの娘である日波里が現れたことで自分の中に隠していた気持ちに気づく。本当に完のことを好きなのかわからなくなったのだ。自分に女としての価値を与えてくれた初めての人だったから、それにすがりついて自分のために付き合っていただけではないか、と。

 性にも疎く、臆病なだけの普通の少女だが、こんなふうに女の気持ちを逆立て、無自覚でも男性を惹きつけ、狂わせてしまう日波里も、また“女の怖さ”を秘めている。母親にまで“オンナ”に育ったと言われ、完やその親友の憲人、クラスメイトの勇といった男性陣からもそれぞれ歪んだ愛情で見つめられる。そんなふうに周りの人々のフィルターによって歪められた少女は、一体どんなふうに成長していくのか?

 「あたしがわるいんです」「もうどーでもいい」と言う日波里が最後になって語り出した心情を見る限り、彼女もただのかわいそうな女の子ではなさそうだ。彼女が秘めている本当の“女の怖さ”は何なのか。続きが気になる作品だ。