綾野剛をも魅了した「仮面ライダー」シリーズの奥深き世界

テレビ

更新日:2012/8/27

 昨年、生誕40周年を迎えた「仮面ライダー」シリーズ。絶賛公開中の映画『仮面ライダーフォーゼ THE MOVIE みんなで宇宙キターッ!』も大ヒットを記録し、仮面ライダーブームはまだまだ続きそうな勢いだ。そんななか、再評価が高まっている作品がある。2003年~04年に放送された『仮面ライダー555』だ。勧善懲悪というお約束を覆し、怪人の苦悩が掘り下げて描かれた作品性の高さはもちろんだが、いまや人気俳優となった綾野剛のデビュー作として注目する人が増えているようなのだ。

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 そんな綾野が、原点ともいえる『仮面ライダー555』について、熱い思いを打ち明けている。
インタビューが掲載されているのは、現在発売中の『ユリイカ9月臨時増刊号』(青土社)だ。綾野が演じたのは、怪人であるのに最期は敵のライダーを守って息を引き取る澤田亜希役なのだが、綾野は“澤田は『ドラゴンボール』におけるピッコロのような存在”と表現。いわく、
「悪なのに人間の心を持っていて、愛情や感情といった自分が渇望していたものを潤すようなものに一瞬でも触れてしまったことに僕はいちおう後悔の念を持って死んだんです。(中略)それこそ絶対悪だったらこんなに苦しまずに死ねたのに、ひとつでもひとの温もりや愛情を知ってしまったから死にたくないとかいろんな感情が生まれて」
と、撮影当時から約10年が経過しているとは思えない、演者として役どころの率直な心情をリアルに語っている。このほか、撮影初日に23テイクも重ねた裏話や、「雰囲気あるよね」と評する声に不安を抱いていたのが、本作の石田監督の一言で受容できるようになったエピソードなど、ファンは必見の内容となっている。

 また、綾野をきっかけにして「仮面ライダー」シリーズにハマった! という人は、ぜひ、その世界観の奥深さ、歴史も知ってもらいたいところ。テレビシリーズの草創期を描いたノンフィクションの集大成的コミックス+貴重な証言が満載の『仮面ライダーをつくった男たち 1971・2011』(村枝賢一、小田克己/講談社)は、入門書にしてマストアイテム。さらに、ライダーシリーズをはじめとする作品群から現代の社会構造を読み解いた評論『リトル・ピープルの時代』(宇野常寛/幻冬舎)もオススメだ。

 子どもと一緒に楽しめる作品として、あるいはお父さんが思い出に浸れる作品として。はたまたイケメンライダー目当てでもOK! そんな懐の広さも、『仮面ライダー』の魅力なのだ。