若手注目俳優・落合モトキ 、10年来の愛読書は吉井和哉の日記本 

芸能

公開日:2012/9/10

 「吉井和哉さんは僕の憧れの人。出会いは中学生の頃、当時、ザ・イエローモンキーを親父がよく聴いていて、“いいなぁ!”と。ビジュアルを観た途端、そのルックスがあまりにもかっこよくて。いい意味で、病的にヤバそうな感じにヤラれた(笑)」

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 そんな落合少年がお小遣いで買ったのが『吉井和哉の㊙おセンチ日記』。“イエモン”ブレイク前夜の1992年から3年余りにわたって綴られた数多のコラムは、“そうきますか!”と、ふいを突かれる独特な視点から切り取られた日常が、時に繊細に、時に下世話に、煽情的に、赤裸々なまでの言葉で綴られている。

 「こういうルックスの人って、ストイックで怖いんだろうなと思っていたら、ギャグセンス満載でかなり笑えた。“ここ、いいじゃん!”という個所が読むたびに変わるのも魅力。20年も前に書かれた日記なのに、現代にリンクするような問題を投げかけているのもすごい」

 この日記を吉井和哉が書いたのは26歳から29歳にかけて。落合さんもあと数年で、当時の著者の年代に差しかかる。

 「この日記が書かれていたのは、“イエモン”の活動が軌道に乗る前の時期から。僕も今、役者として、そういう時期なのかなと思っていて。駆け上がっていったときの吉井さんの気持ちが知りたくて、自分と照らし合わせて読むところもありますね」

 子役時代からさまざまな作品に出演してきた落合さんだが、最近、映画に、舞台に、その存在感を着実に大きなものにしている。それをさらに印象づけたのが、映画『ハイザイ~神さまの言うとおり~』だ。役どころは、ともさかりえ演じる万引き女を、ボスから誘拐を命令されたユタと勘違いして拉致する、犬好きで超潔癖症の下っ端ヤクザ。狭い車内での二人の緊迫した心理戦は、絶妙な間合いと笑いが交錯する印象的なシーンだ。

 「かなり長いカットでしたが、テストはなく、すぐ本番。それがまた新鮮で、考え込むことなく、気持ちよく演じられました。舞台のような感覚もあり、ともさかさんが仕掛けてきた大胆な仕草に自然とニヤけちゃったり(笑)。何が起こるかわからない状況の中で味わった臨場感は、映像にも存分に表れています」

 CMを多く手掛けてきた監督ならではの斬新な発想、現地スタッフとの温かなふれあいが生みだした空気……そんな鮮やかさとのどかさが同居するスタイリッシュ・コメディは、知らず知らずのうちに観る人の表情も気持ちもほぐしていく。

 「ちょっとした誤解が引き起こすミラクル。人生は些細なところにもチャンスが待ち受けていることを感じていただければ。爽快感いっぱいの映画です!」

落合モトキさんが選んだ一冊
吉井和哉の㊙おセンチ日記』 吉井和哉 ロッキング・オン 1223円
ザ・イエローモンキーがメジャーデビューを果たした1992年から、大ブレイクを実現した96年まで『ロッキング・オンJAPAN』誌上で連載されたコラムを収録。音楽、日常、怒り、幸せ、夢など、むき出しの本音が、著者独特の言葉のセンスとオチで綴られている。

取材・文=河村道子
(ダ・ヴィンチ10月号「あの人と本の話」より)