「ココロコネクト事件」でも話題 どこからパワハラ?

ビジネス

更新日:2012/9/13

 いま、『ココロコネクト』ドッキリ問題がネット上で大きな話題となっている。
簡単に経緯を説明すると、テレビアニメ『ココロコネクト』のオーディションに声優の市来光弘が参加。しかし、さる6月に行われたイベントで、そのオーディションがドッキリであったことを発表し、隠し撮りしていた偽オーディションの映像を公開。さらに宣伝部長として全国を回る企画が言い渡された……というもの。このドッキリ企画に対し、「これってパワハラなのでは?」という意見が数多く寄せられ、公式サイトに謝罪文が掲載されるまでに至ったのだ。

 近年、このように一般的にも広く認知されるようになった「パワハラ」という概念。東京都の定義では、「職場において、地位や人間関係で弱い立場の労働者に対して、精神的叉は身体的な苦痛を与えることにより、結果として労働者の働く権利を侵害し、職場環境を悪化させる行為」とある。しかし、具体的にどこからがパワハラになるのか、あまり知られていないのではないだろうか。

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 『それ、パワハラです 何がアウトで、何がセーフか』(笹山尚人/光文社)は、パワハラのパターンとして「労働契約を結ぶ際の嫌がらせ」や「仕事の取り上げ」「本人にふさわしくない仕事の強要と退職強要」などを挙げている。そんななかでも、パワハラの相談で圧倒的に多いのは「言葉の暴力」だという。本書で紹介されている実際の事例でも、

「おまえは、頭がおかしい」
「山に籠もって陶器でも焼いてろ」
「そこの窓を突き破って飛び降りろ」
「今後、一度でも楯突いたらおまえを懲戒免職にしてやる!」
と、あまりにひどい暴言が並んでいる。

 だが、法律上はパワハラの明確な定義がないため、裁判でも判断が分かれるようだ。たとえば、「意欲がないなら会社を辞めるべきだと思います。(中略)あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか」という内容のメールの場合。東京地裁は、「叱責としては強度だが、ただちに業務指導の範囲を超えているとはいえない」と判断。しかし、控訴審の東京高裁は、「退職勧告とも会社に不必要な人間とも取れる表現」「本人の名誉感情を毀損し、不法行為」と認定したのだ。この事例を踏まえて著者は、「“人を壊す発言”と判断された場合、それはパワハラにあたると考えられるのではないか」と感想を述べている。

 では、「これってパワハラ!?」と思う局面に遭遇したときは、どうすればいいのか。本書によれば、まずはメモを取ったり、メールを紙ベースで確保したり、音声記録を取るなどの「事実の確保」を勧めている。同時に、行政機関や労働組合、弁護士などの専門家に相談し、鑑定を受けることが大事だという。
 
 また、パワハラとまではいかなくても、「何が何でも譲歩しない」「自分の言いたいことばかり並べ立てる」「言うことが一貫しない」「些末なことにこだわる」といったパワハラ予備軍にはどうすればいいか。『職場いじめ あなたの上司はなぜキレる』(金子雅臣/平凡社)には、そんな“不愉快な上司”との接し方が書かれているので、お悩みの人はぜひ参考にしてほしい。

 逆に、人の上に立つ立場にあるならば、部下が傷つく理不尽な言動を慎しむことを肝に銘じていれば、問題も起こりにくくなるはず。いじめ問題同様、相手の気持ちになって考えることが大切なようだ。