荒木飛呂彦も絶賛! 今、もっとも胸を高鳴らせる恋愛マンガ

マンガ

更新日:2012/9/18

 今、ジョージ朝倉が絶好調だ。育児休暇を経て、今年エネルギッシュに活動再開。眩い10代の恋を描くロングランヒット『溺れるナイフ』(講談社)の最新13巻を早くも上梓。パワフルな大人の恋模様『テケテケ★ランデブー』(祥伝社)も大好評だ。

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 当代きっての恋愛マンガの名手が描く世界を、『ダ・ヴィンチ』10月号ではインタビューを中心にたっぷりと紹介。あの荒木飛呂彦から「『溺れるナイフ』は最高傑作!」と応援コメントも寄せられている。

 ジョージさんの作品において特に定評があるのが、10代の少年少女のラブストーリーだ。『溺れるナイフ』の主人公は、小学6年生の少女・夏芽。浮雲町という海辺の田舎町に引っ越してきた彼女は、同級生のコウに出会い一瞬で恋に落ちる。修学旅行の夜をともに過ごしたり、一緒に東京に家出したり、バイクを二人乗りしたり……。彼らの日常は、眩しく輝いている。
「人を好きになるって、特に若いときは、相手に屈することと同義だと思うんです。“好き”イコール“負け”。だから自分の気持ちを認めたくない。でも、どうしようもなく惹かれてしまう。成就したら幸せかもしれないけど、失恋したらただ辛いだけ。恋愛って本当にやっかいなものだな、と思います」(ジョージ)

 甘く美しいだけではない。恋の痛々しさや醜さも濃密に描き出す骨太な表現力は、ジョージさんの真骨頂だ。夏芽とコウが生み出すヒリヒリするような恋の熱に、読者は夢中になってしまう。
溺れるナイフ』は、正統派の成長物語でもある。小学生だった夏芽とコウは、最新13巻では高校生になっている。
「私自身、中学のときが一番辛かったんです。もう生きているだけで辛かった。それまで思い描いていた自分と、現実のギャップに気づいてしまった。子どもの思い上がりがガラガラと崩れて、でもプライドだけは変に残っていて。自分の中で葛藤が渦巻いていました。そんなしんどさが、夏芽とコウにも反映されていると思います」(ジョージ)

 『溺れるナイフ』のナイフとは、自意識の暗喩だという。二人はその葛藤を、どのように乗り越えていくのか? 二人の運命は、個性的なサブキャラクターたちとも密接に絡み合っている。彼らの人生も丁寧に掘り下げられ、目が離せない。

 一方で、大人のリアルなラブストーリーを描いても、ジョージさんの力量は一流だ。
「大人の恋は、ちょっとしんどいですね(笑)。キャラクターの心理描写に自分の通ってきた道、かつて感じたことをどうしても入れてしまいます。いつも自分の精一杯をぶつけている感じです」(ジョージ)

 現在連載中の『テケテケ★ランデブー』は、超個性的でパワフルな作品。人並みはずれた胃袋を持つ農学部の学生・たよ子が恋したのは、天然ジゴロの獣医・獅子王。しかも舞台は、たよ子がゼミ合宿で訪れた離島・めかけ島だ。二人の恋愛の行方に加えて、美しい自然や野性味溢れる農業など、さまざまな面白さが詰まっている。

 最後に、創作者として少女マンガに込める一番強い思いとは何か? ジョージさんにズバリうかがった。
「それはやはり、読者の皆さんに“疑似体験”していただきたいと思っています」(ジョージ)

 主人公の恋に憧れたり、今の自分の恋を重ねたり、かつての恋を思い出したり……。確かにそれこそが少女マンガ、恋愛マンガの醍醐味だ。
「そんなふうに私のマンガを読んでいただけたら、この上なく嬉しいです。これからも暑苦しいぐらい全身全霊で描き続けますので、どうぞ楽しんでください!」(ジョージ)

取材・文=松井美緒
(ダ・ヴィンチ10月号「コミック ダ・ヴィンチ」より)