miwa月9主題歌『ヒカリヘ』誕生の裏にあの小説

芸能

更新日:2012/9/18

 9月17日に最終回を迎えた小栗旬主演の月9ドラマ『リッチマン、プアウーマン』。ドラマだけではなく、現役慶應大生ミュージシャン・miwaによる主題歌『ヒカリへ』もレコチョクランキング4部門でトップを獲得するなど、人気を集めている。

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 『ヒカリへ』は、エレクトロニカをアレンジに取り入れたmiwaの新境地ともいえる楽曲。人を想う強い気持ちが描かれた前向きな歌詞も印象的だが、じつはこの歌詞、川上未映子の小説『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)からインスパイアされて生まれたのだという。

 現在発売中の『ROCKIN’ON JAPAN』(ロッキング・オン)10月号のインタビューによると、楽曲制作中に『すべて真夜中の恋人たち』を読んでいたと話すmiwa。そんななか、「光が印象的に描かれてるシーン」に影響を受けたそうだ。
「(小説のなかに)光って反射したり結集するけど、されなかった光は宇宙に飛んでいくみたいなことが描かれていて。同じように、目に見えないけど誰かへの思いも、この空気中にいっぱい溢れてて、それは一度発信したんだけども戻ってこないこともある。それって報われなかったらどこに流れていくんだろう? どこに行くんだろうな?って考えながら……だから今回の歌詞は“光”と“想い”を一緒に捉えているんですね」

 発言を読むと、かなり深い部分で小説に共鳴した様子のmiwa。このように、小説から影響を受けて楽曲が生まれたという話題はよく聞くもの。

 たとえば、宇多田ヒカルの大ヒットアルバム『DEEP RIVER』は、アルバム全体が遠藤周作『深い河』にインスパイアを受けて誕生。アルバム『HEART STATION』収録の『テイク5』も、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を意識してつくったという。さすがはポップミュージック界きっての読書家と称される宇多田らしい話だ。

 さらにインパクト大なのは、イカ天出身で海外からも評価が高いロックバンド・人間椅子。すでにお気づきの方もいるかと思うが、バンド名からすでに江戸川乱歩の小説タイトルに由来しているのだ。楽曲も『淫獣』に『人間失格』、『羅生門』『桜の森の満開の下』など、乱歩に太宰治、芥川龍之介、坂口安吾と、さまざまな文豪からの影響が一目瞭然。文学meetsロックの金字塔だ。

 また、シンガーソングライターの高野健一の『さくら』は、西加奈子の同名小説から生まれた歌で、小説を読んで歌を聴けば、さらに切なさが増すこと間違いなし。一方、海外では、ローリング・ストーンズの名曲『Sympathy for the Devil』(邦題:悪魔を憐れむ歌)が、ミハイル・A・ブルガーコフによる長編小説『巨匠とマルガリータ』からの影響が指摘されている。

 もちろん、逆に“楽曲から影響を受けて生まれた小説”もある。東野圭吾の『夜明けの街で』(角川書店)は、サザンオールスターズの『LOVE AFFAIR ~秘密のデート~』からインスパイアを受けたことを東野自身がインタビューで明かしているし、よしもとばななの初期短編『ムーンライト・シャドウ』(朝日出版社)は、マイク・オールドフィールドの同名曲から着想を得たという。

 表現方法は違っても、感性を研ぎ澄まして作品をつくりあげるという意味では文学も音楽も同じ。読者/リスナーとしては、2度のお楽しみがあって、ちょっぴりお得感も。まずは、『ヒカリへ』と『すべて真夜中の恋人たち』を聴き&読みくらべしてみてはいかがだろう。