“青春”がしんどい! 少女マンガに異変が

マンガ

公開日:2012/9/23

 『別冊マーガレット』(集英社)で大人気連載中の『アオハライド』(咲坂伊緒/集英社)。みなさんはこのタイトルに込められた意味をご存知だろうか? これは、「アオハル(青春)+ライド(ride=乗る)」を掛け合わせた造語で、「一生懸命青春に乗っていく」という作者の意図が込められているそうだ。「青春に一生懸命乗る」ってなんだか不思議な気もするが、最近の少女マンガではがんばらないと青春するのも大変なようだ。

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 『アオハライド』の主人公・双葉は、カバンの中はぐっちゃぐちゃ、あんぱんなどを大量に買い込んで大食いしたり足で職員室のドアを開けたりするなど、がさつな行動を“わざと”して男子にモテないようにしている。彼女がわざわざそんなことをするのは、中学生の時に「男子の前で猫かぶってる」と言われて孤立していたから。女子に嫌われないようにするためにそんな行動をとっているのだ。
 
 また、メイクバッチリのギャルモードであるオンと家に帰ったらソッコー制服を脱いでパンツ一丁で過ごすオフを巧みに切り替える主人公・仁香が登場する『スイッチガール』(あいだ夏波/集英社)も、がんばって青春している。本当はくさやや塩辛、モツ煮というなんとも女子高生らしからぬ食べ物が大好物だし、近所のスーパーぐらいなら部屋着のまま平気で出かけちゃう。スーパーの袋詰めが得意だったり、親友の前ではオナラだって平気でしたりするのだ。しかし、周りによく見られるため、学校ではバッチリギャルになり、合コンでも目立って男をゲットする。そのおかげでクラスメイトからの信頼も厚く、カリスマ的存在という確かな地位を得ているのだ。

 さらに『ヒロイン失格』(幸田もも子/集英社)という作品では、幼馴染の利太のヒロインは自分だと信じて疑わず、周囲の女子を脇役としか思っていなかった“腹黒い”はとりが主人公。しかし、利太は違う女の子と付き合っているのにはとりが利太のことを勝手に好きでい続けてもかまわないと言われ、どう見ても自分の方が都合のいい女で、脇役になってしまっていた。そんなはとりが、今度は口説かれて別の男の人を好きになってしまう。一途に相手を想い続けるものではなく、口説かれて他の男に惚れてしまうなんてまさしく「ヒロイン失格」なのである。でも、いつまでも幼馴染のヒロインは自分だと思い込むわけでもなく悩みながら一生懸命前に進もうとしているところは、がんばって“青春”している証拠なのではないだろうか。

 かつての青春マンガのように、“自分はとくに自覚してないけど、そのままで”かわいいヒロインではなく、普段の自分を偽ってまでもがんばって青春しているヒロインが増えてきた。従来のように待っているだけで相手にも好かれてハッピーエンドなんてお話では、読者の女の子たちが納得しないのだろう。現代のリアルのしんどさをより忠実に再現し、読者の心をつかむために、マンガのなかでも恋や友情といった“青春”をするのが、しんどくなっているのだ。

 「いくつになっても青春!」なんて大人もいるけれど、そんな言葉も10年後にはもしかしたら死語になっているかも……しれない。