明日もし「男性不妊」と判断されたら……

出産・子育て

更新日:2012/9/26

 結婚・出産の晩婚化やセックスレスなどが原因で、いま日本ではおよそ200万人が不妊に悩んでいるといわれている。そんな女性が改善すべきものとして思われがちな不妊だが、実は不妊症カップルの40~50%は「男性が原因」という報告もある。いまや男にとっても「不妊」は人ごとではないといえるだろう。そこで世の男性のみなさんに、「男の不妊」がちょっと心配、または実際に診断されたときに慌てないよう「男性不妊」に関する本を紹介してみよう(けっこうあるのだこれが!)。

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 まず、「男性不妊かな?」と不安を感じたら読んでみたいのが『男性不妊症』(石川智基/幻冬舎)だ。基本的な精子の働きから男性不妊症の主な原因となる精子異常や勃起不全、治療の最前線まで、男の生殖にまつわる基本情報がやさしくわかる1冊。著書は日本ではまだ数少ない男性不妊の専門医として有名な医師である。

 基礎知識を身につけた後は、東洋医学のアプローチで自分の不妊タイプに合うアプローチを見つけ出すことができる『男性不妊―効果的な薬膳療法』(梁 晨千鶴/メディカルユーコン)なども読んでみるといいかもしれない。タイプ別の薬膳レシピを中心に、オススメまたは控えた方がよい食材と漢方薬が紹介され、日頃から養生できるポイントを抑えることができる。実は漢方、調合次第で各症状に合わせたきめ細やかな効能を発揮するとされ、今後の不妊治療界にも期待の高まっている治療法で、ほかにも「男性不妊」向けの漢方レシピをまとめた『妊娠力をつける漢方レッスン』(志馬千佳/主婦の友社)などもある。

 長引く治療でつらいときには、角田光代氏も絶賛したという『「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」男45歳・不妊治療はじめました』(ヒキタクニオ/光文社)がおすすめ。「安定」とはほど遠い人生を歩んできた筆者が45歳で子づくりに励む自身の体験つづった「懐妊トレーニング」の体験記。精子の運動率が20%と診断された絶望から、男の不妊治療への素朴な疑問や違和感、女性の受ける痛みに直面、など不妊治療の日々を乗り越え、5年弱の「懐トレ」の結果、我が子を授かるまでの様子が描かれた小説のようなドキュメンタリーだ。

 また、無精子症の辛さを告白したダイアモンド☆ユカイの『タネナシ。』(講談社)も同様の衝撃作。不妊に悩む男性たちの間で「わかる、わかる!」と評判で、同じ苦労を抱えた仲間がいるのを知り、また新しい気持ちで治療に挑むモチベーションにもなってくれそうである。

 その一方で「不妊治療をやめる」という、もうひとつの選択肢をとった夫婦による話題作も覚えておきたい。『不妊治療、やめました。―ふたり暮らしを決めた日』(堀田あきお、堀田かよ/ぶんか社)は、手塚治虫に師事していた漫画家・堀田あきおと妻のかよによるコミックエッセイ。10年間に及ぶ不妊治療の末、子どもを諦めるという決断を下した夫婦の体験記からは、深い夫婦の絆を感じずにはいられない。一見ほのぼのしたテイストだが、夫婦間の悩みや苦悩が事細かに描かれた様子はかなりリアル。明るく支えあうふたりの姿には、不妊治療を続ける、続けないに関わらず「前向きになれた!」という読者も多いようだ。

 このように多種多様な「男の不妊」関連本。エッセイやドキュメンタリーは読みやすいものも多く、純粋に作品として楽しめる。心当たりがなくても、興味があったら一読してみるのもいいかもしれない。