「カジュアル親孝行」がブーム!?

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更新日:2012/10/4

 最近、親孝行したい人が増えているらしい。
男女1100人の「キズナ系親孝行、始めました」平成親子の“つながり”術』(河出書房新社)の著者でマーケティング専門家の牛窪恵がネット上で行ったアンケートによると、「あなたは、親孝行をしたことがありますか?」という問いにYESと答えた人は実に8割以上だという。

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 その中身はというと、1位は「健康であること」(34.7%)、つづいて2位「結婚したこと」(20.0%)、3位「元気がある、明るい」(17.3%)と続く。ほかにも「定期的に親と顔を合わせる」「親の話を聞いてあげる」「一緒に買い物に行く」なかには「親に自分の話をする」なんてものまで。

 え? それって親孝行? 「家を建ててあげる」とか「お墓を守る」とかじゃないの? と思ったあなたは、昭和派かもしれない。牛窪によると、戦後生まれの団塊世代を親にもつ、団塊ジュニア世代あたりから「親孝行」がカジュアルなものに大きく変わっているのだという。

 同書では、「時間がない」「お金がない」「ぎこちない」という親孝行を邪魔する“3つのない”を克服する方法として、1100人から寄せられたさまざまなカジュアル親孝行術が紹介されている。「お稽古の発表会を観に行ってビデオに撮って編集してあげた」「グンさまのプレミアムイベント(抽選)に参加できるよう応募してあげた」「カラオケで、父の歌に“これでもか”と過大拍手してあげる」など親の趣味や生きがいを応援するもの。「パソコンをネットにつなぎ、ネットやメール(アカウント)をセットしてあげた」「圧力鍋と家事代行サービスをプレゼント」「歩数計を買って“今日何歩歩いた?”としょっちゅう聞く」と日常生活をサポートするもの。

 また、6年連続で増加しているとのデータもある、親孝行旅行はもはや定番。なかでも、かつて家族で旅した思い出の地を再び訪れる「リバイバル旅行」というのが人気らしい。

 思い出系で驚くのは、「家族全員でケーキ入刀」というもの。「ママにウェディングドレスを着せてあげたい」「両親に結婚式をプレゼントしたい」という人もけっこういるらしく、そうしたプランを用意している結婚式場もあるのだとか。

 それにしても、親孝行をする人が増加しているというのには、一体どんな背景があるのだろうか。『100兆円プラチナエイジ市場を動かした オヤノタメ商品 ヒットの法則』(今井啓子、SUDI/集英社)によると、2011年度のシニア(60歳以上)の年間消費支出は、初めて個人消費が101兆2500億円を突破して全体の44%に到達。いまや経済動向の鍵を握っているのはシニア世代=親世代なのだそう。それで、 “親のため”=シニア世代をターゲットにした商品やサービスから多くのヒットが生まれているというのだが……。

 これって親孝行がブームってこと? だけど、そもそも親孝行ってブームとかマーケティングに乗せられてすることなの? そんな素朴なギモンを抱いてしまう人もいるだろう。

 そういう人も、2010年に発売されて話題となった『親が死ぬまでにしたい55のこと』(親孝行実行委員会/泰文堂)を読めば気が変わるかもしれない。この本が指摘する重要な点は、親と一緒に過ごせる時間がどれくらいか? と自覚することだ。たとえば、親に残された寿命が20年だと仮定しよう。1年に親と会う日数が盆+正月で計6日間とし、1日一緒にいる時間が11時間であれば、合計1320時間。これを日数に置き換えると、55日になる。この数字に、驚く人も多いだろう。

 自然に親孝行しようという気持ちになるのを待ってる時間は、それほど残されていないのだ。まあブームが習慣として定着することもあるし、まずは形から入ってあとから気持ちがついてくることもあるし、くらいの気軽な気持ちで親孝行してみては。

 たとえば手始めに、“本を贈る”なんていう親孝行はどうだろう。お金も時間もかからず、話題がないなんてぎこちない親子の共通の話題にもなるし、オススメですよ。