ひそかな人気? ポエトリーリーディング・朗読の今

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/26

  ここ最近、よく「朗読」を目にする。
例えば、85万ダウンロードされた人気iPhoneアプリ『朗読少女』。有名な文学作品を乙葉しおりというキャラクターが朗読してくれるというアプリだが、現在コミックスや書籍、イメージソングまでさまざまなかたちでメディアミックスされ、10月27日には『朗読少女 しおりのフォト日記&朗読CDオフィシャルブック』(宝島社)という公式イラスト集が刊行される。

アプリだけではない。ニコニコ生放送では、8月に女優の栗山千明が「栗山千明の新月朗読館」で、京極夏彦の『鵺(ぬえ)』を朗読するというイベントを開催。去年実施された、声優の坂本真綾が近代文学の名作を朗読するという「満月朗読館」に続いて、大きな反響を呼んだ。

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また今年の6月には、一般公募した詩の中から優れたものを声優の阿澄佳奈、後藤沙緒里らが朗読するというイベント、「こえサイファー」が開催された。会場で自分が書いた詩を直接好きな声優に朗読してもらるということから、実に多くの詩が投稿された。イベント当日も、谷川俊太郎のビデオレターや朝吹真理子のゲスト朗読などで盛り上がり、ひとりひとりの詩が声優たちの朗読によって息を吹き込まれていく様子を体験することができた模様。

これには、昨今の声優ブームや、インターネットで声を発信する媒体が増えたことが関わっていると考えられる。自分の好きな声で、好きな作品を読んでもらいたい、そんな需要が少しずつ増えているのかもしれない。

「こえサイファー」を主催した詩人の佐藤雄一氏は、昨今の朗読の盛り上がりに対して、
「今までは作者自身が自分の作品を朗読する機会しかなかったが、声のプロの方などに朗読してもらうことで、作品のもつポテンシャルの別の部分が発揮され、今まで読んで来なかった人たちが興味をもつきっかけになっているのでは」と語った。

10月16日には「星海社朗読館シリーズ」の第七弾となる『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』(乙一、釣巻和:イラスト、栗山千明:朗読/講談社)が発売。CDには栗山千明の朗読が収録されている。

これを機会に、朗読イベントに参加したり朗読CDを集めてみると、また普段の読書とは違う体験ができるかもしれない。

文=ゆりいか