よしながふみ、三浦しをんも! 今“ベルばら”が熱い

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/26

 今年で誕生40周年を迎える池田理代子の傑作少女マンガ『ベルサイユのばら』(池田理代子/集英社)。

“ベルばら”は、ご存じの通り、男装の麗人・オスカルに、彼女を慕う青年・アンドレ、世紀のお姫さまであるマリー・アントワネットの3人を通して、フランス革命へと向かう波乱の歴史、そして壮大な愛の物語を綴った超大作。とくに、軍服に身を包んだオスカルとアンドレの恋愛劇は元祖BLともいえる設定で、いまなお高い人気を誇っている。

9月7日に発売されたムック『ベルサイユのばら40周年+デビュー45周年記念 池田理代子の世界』(朝日新聞出版)でも、直木賞作家の三浦しをんが、アンドレを再評価。子どものときは単純に「アンドレかっこいい」、20代半ばから後半は「ちょっと頼りなさすぎじゃないか」と思ったという三浦。しかし、30代半ばを過ぎた今は「いや、これほど成熟した強さと優しさを宿した男性はめったにいない」と再評価にいたったそう。

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また、三浦よりも熱く“アンドレ愛”を語っているのは、マンガ家のよしながふみだ。

よしながは、アンドレがとめどなくあふれるオスカルへの愛をこらえきれず、オスカルを押し倒すものの強烈に拒否されてしまう告白失敗シーンを挙げ、「大人の男性はみんな紳士で失敗しないっていうのは、少女マンガのある種のお約束ですよね。でもアンドレは、そういうお約束的な部分のない、とても人間的な人」とアンドレのチャームポイントを解説。

さらに、よしながは激動の社会の渦中にあって「革命思想に全く目覚めない平民の男」アンドレの特異さに着目。「平民で、オスカルという貴族の娘が好きなんだから、多少は勉強してもいいと思うんです。でも全くそう思わない彼」と、アンドレの“恋愛中心体質”を鋭く指摘する。そして「貴族にさえなれば絶対にオスカルと結婚できる」と盲信するあたりに、「その確信がバカで、またキュンとしてしまう」のだとか。よしながは、『ダ・ヴィンチ』11月号のインタビュー内でも、「ダメな人萌え、ですかね。それ以降、いろんなマンガにアンドレを探す旅が始まるんです。従者とか幼なじみとか言われれば、すぐ読んでみるようになりましたね」と、アンドレとの出会いがその後のマンガ人生を与えた影響について語っている。

愚直で、ちょっぴりマヌケな部分も多いアンドレ。しかし、包容力を高めた大人の女性こそ、そんなアンドレにビビッドに反応してしまうのかもしれない。

もちろん、ベルばらの魅力はアンドレだけではない。1巻の最初、「マリー・アントワネットがフランスへ嫁に行くシーンですでに涙が出てきて困った」という直木賞作家の中島京子は、「のっけから終わりまで怒涛の恋愛模様が描かれる」点に瞠目したそうで、「低体温とか草食系とか、そんなんじゃなかったんだ、昔は!」とベルばらの“恋の熱さ”を絶賛。角田光代は「幼き日々、『ベルサイユのばら』を読んでいさえすれば、私はもう少し世界史に、歴史全般に興味を持っていたのに違いない」と、“世界を知る扉”としてベルばらが果たす役割の大きさに触れている。

フランス革命に身を捧げるオスカルさまの気高さに震え、一途すぎる男・アンドレに萌え、マリー・アントワネットの悲恋に涙する。――「まだベルばらは読んだことがない!」という人は、この秋の夜長、ぜひ本書を副読本に、ベルばらの深く激しい愛の世界にどっぷり浸かってみては?