倹約家のオードリー春日がハマって即買いした本とは?

公開日:2012/10/6

 倹約家として有名な春日さんは、ほとんどのマンガを立ち読みで済ませるという。そんな春日さんが「6~7年前に初めて読んで、即座にハマってレジに向かった」と語るのが『藤子・F・不二雄[異色短編集]』だ。

advertisement

 「読んだ後になんだかイヤ~な気分になる作品が多い。読み終わってからジワジワ怖くなってくるというか。手塚治虫さんの大人向けマンガにも、似たテイストのものが多いですけど、F先生の場合は、普段通りのかわいらしい画風で描かれているので、よりいっそう怖い。刺激が欲しいときに読み返しますね」

 春日さんが好きな作品は、暴力的な小説家の元に原稿を取りに行った編集者が衝撃的な事実に気付く『コロリころげた木の根っ子』や、人間にそっくりな種族が家畜として扱われる星に漂着した宇宙飛行士が主人公の『ミノタウロスの皿』など。

 「どちらの作品も予想外の展開に驚かされましたね。『コロリころげた~』は、怖いだけじゃなくて“この後どうなるんだろう?”って、いろいろと想像が広がる。『ミノタウロス~』は風刺も効いていて、単なる物語で終わってないところがすごい」

 こうした物語は、芸人・春日俊彰の芸風にどんな影響を与えているのだろうか?

 「F先生の“SF”は、サイエンス・フィクションの略であると同時に“少し不思議”の略でもあるんですよね。この“少し不思議”っていうのが、自分と似ている気がしています。ネタの冒頭で“胸を張ってゆっくり登場する”なんて、どう考えても爆笑にはなりませんよね。でも“なんだアイツは?”ってことにはなる。基本的に、ストレートにボケて笑いを取るタイプではないので、なんか気持ち悪い、どうやら普通じゃない、少し不思議っていうのにこだわっていて、密かに意識してます」

 春日さんが出演している番組で、少し不思議な人が続々登場するのが『なんだ君は!? TV』だ。番組の主役は、思わず「なんだ君は!?」と言いたくなってしまうような新人類たち。春日さんをはじめとする芸人たちがジャーナリストとなって、新人類たちの日常を探っていく。

 「ツッコんだ質問をしたら怒られて、撮影が中断しちゃったことも(笑)。筋書きがないので、春日的には面白い。放送ではカットされてしまうことも多いんですが、彼らの話はぶっ飛んだ内容ばかり。あまりにも大げさで、取材後に振り返って“嘘だったんじゃないか?”と思うことも。そういうときの微妙な気持ちは、F先生の短編を読んだ後の感覚と似ているかも!? 今後はもっと体を張った取材にも挑戦したいですね。春日の活躍に注目していてください!」

■春日俊彰さん(オードリー)が選んだ1冊
藤子・F・不二雄[異色短編集]』(全4巻) 藤子・F・不二雄 小学館文庫コミック版 各590円 
ファンタジックな作風で知られる藤子・F・不二雄による、大人向けで「少し不思議(SF)」な味付けの短編集。『ドラえもん』『パーマン』などの子ども向け作品とは異なり、社会への警告や皮肉が効いた、大人のための本格SF作品となっている。「『ドラえもん』が好きだった人にぜひ読んでもらいたいですね」(春日さん)

取材・文=澤井 一
ダ・ヴィンチ11月号「あの人と本の話」より)