読書家の三浦翔平「山田悠介作品の意外な展開にやられました」

芸能

更新日:2012/10/11

 「本を読むのはたいてい寝る前。一気に読んじゃいたいので、中編や短編の小説が多いですね」と、読書家としての一面をのぞかせる三浦さん。お気に入りの作家は木下半太や七尾与史など。なかでも「山田悠介さんが大好きで全部の作品を読んでます」とのこと。共通するのは、一筋縄ではいかない物語の展開だ。

advertisement

 「読んでいくうちに、『そう来たか!』と思えるドンデン返しが大好きなんです。しかもこの『その時までサヨナラ』は、山田さんと言えばホラー小説のイメージが強いのに、初めてファンタジーを描いた作品で。そうした意外なところからしてやられた感があったんですよね」

 主人公の悟は家庭を顧みない仕事人間だ。ところが別居中だった妻が事故死し、数カ月ぶりに顔を合わせた一人息子と妻の親友という謎の女性との奇妙な三人暮らしが始まると、彼の心に少しずつ変化が生まれていく。

 「常に周りを見下していた男が人間味を帯び、父親としても成長していく。その過程がとても魅力的に描かれているんですよ。忘れていたものを思い出させてくれるような心温まる展開もあるし。ほっこりした気持ちになりたい方にはおすすめですね。それに、もちろん山田作品らしい仕掛けもたっぷり散りばめられてます。奥さんへの愛情を取り戻すあたりも決して予定調和のラブストーリーになっていない。変化球が好きな僕にとって、まさに最高の1冊でしたね!」

 そんな三浦さんがこの度、新たな写真集を完成させた。旬の俳優をアーティスティックに切り取った『月刊MEN』シリーズ。「写真って実は苦手なんです」と苦笑する彼が、この作品で挑んだテーマはなんと“素顔”。なぜあえてこのコンセプトを選んだのか。そこには理由があった。

 「これまでの『月刊MEN』シリーズは蜷川実花さんのカラーもあって、エロティックな写真が多いですよね。それなら、今まで誰もやったことのないものを作りたいと思ったんです。だから、どんな写真を撮るのかまったく決めずにロケ地に行って、あとはその場の思いつき。完全に寝起きだったり、二日酔い気味の顔だったり、その時々の状態を隠さず撮影してもらいました」

 たとえ苦手なことも、やるからには楽しむ。それが彼の仕事との向き合い方。そうして出来上がったものは、「プライベートショットのオンパレードのような写真集になりました」と笑う。

 「表情を意識しなくてよかったので撮影は本当に楽しかったですね。お気に入りは海のカット。完全に童心に帰ってはしゃいでますから。まぁ、でも今になって、こんなに素の顔を見せて大丈夫だったのかとちょっとだけ不安になってますけどね(笑)」

■三浦翔平さんが選んだ1冊
その時までサヨナラ』 山田悠介 文芸社文庫 630円
家庭を犠牲にして仕事に打ち込んできた森悟に、別居中の妻が地震による列車事故で亡くなったとの連絡が入る。やがて、妻の親友と名乗る晴子の力を借りて、生き残った息子の世話をするうちに、悟の心に父親としての感情が芽生えていく。ホラー小説の新旗手・山田悠介が新たなジャンルに挑んだラブ・ミステリー。

取材・文=倉田モトキ
(ダ・ヴィンチ11月号「あの人と本の話」より)