サブカル男子・せきしろのイタい青春がラノベに!

マンガ

更新日:2014/4/14

 ピースの又吉と共に書いた自由律俳句&エッセイ集『カキフライが無いなら来なかった』(幻冬舎)やハリセンボンのはるかの彼氏としても話題になった放送作家のせきしろ。だがせきしろといえば、なんといっても、星野源主役でドラマ化もされた大ヒットエッセイ集『去年ルノアールで』(マガジンハウス)だろう。1日中喫茶店にいて、店員や客の様子を眺めては妄想に耽る……。こんなふうに気持ちや思考の赴くままに妄想を暴走させてしまうのが特徴の彼が、今度は短編ライトノベル集に挑戦した。

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 10月1日に発売された『学校の音を聞くと懐かしくて死にたくなる』(エンターブレイン)は、自身の経験も交えながら「未練と後悔で書かれた」そうで、思春期ならではのちょっとイタい自意識と妄想であふれている。たとえば、授業中に校庭に入ってきた犬を見て、どんな犬なら高校生になった今でもはしゃげるかといったくだらない妄想を繰り広げてみたり。結局は参加しないイベントごとなのに、誘われないのはさみしく「誘われたけど断った」という優越感に浸りたいがために、わざわざ「すまないが、誘ってくれ」と友だちに頼んでみたり。他の人と同じように平気で「イェーイ」と言えなかった自分、新品の靴に気づかれて指摘されるのが恥ずかしかった自分……。

 クラスのリーダー格などではもちろんなく、スクールカーストのどちらかというと下のほうで、こんがらがった自意識とたくましい妄想力を発揮しながら学生生活を送っていたサブカル男子たちには、“あるある”と共感できることも多いかもしれない。

 普段は全く接点のなかった他クラスの女子と同じ高校を受けたときのことや、駅ですれ違うだけだった他校の女の子と同じ教習所に通った思い出など、女子からみのエピソードも綴られているが、なかでも、いかにもサブカル男子な恋愛模様が描かれた一編がある。

 休日、家から2キロほど離れた好きな女の子が働いているというファミレスまで出かける主人公。なんとかして仲良くなりたいと思った彼は、アンケート用紙を使って自分をアピールすることにしたのだ。話しかけたほうが手っ取り早いのに、そんな勇気がなくわざわざめんどくさい手段をとってしまうところがザ・文系男子。

 「来店時の従業員の対応は?」「従業員は笑顔で対応していましたか?」といった質問に5段階で評価していくアンケート。当然全て5かと思いきや、それでは彼女の印象に残らないと思った主人公は必死に考えるのだ。「来店時の従業員の対応」は3。納得できない彼女が追いかけてきてくれるかもしれないし、そしたら「もう少し一緒にいたかったのに対応時間が短かったから、そこをマイナスにしたんだ」と応える。「従業員の身だしなみは?」という問いにも「綺麗すぎて注目の的になっている。他の男に見られたくない」という理由で1をつけた。そうやって最後には後々優しさを見せてギャップで気を引くため、わざとぶっきらぼうな態度で店を後にするのだ。しかし、残されたのはことごとく低評価のアンケート用紙で、最後のぶっきらぼうな態度も相まってただの嫌な客になっていたことに気づくのは、もっと後のこと。

 こんなふうにロマンチストな妄想が暴走してしまったり、自分が傷つかないように考え行動してしまったサブカル男子にとっては、まさに『学校の音を聞くと懐かしくて死にたくなる』1冊。自意識過剰だけどとってもナイーブな自分だった青春を思い出し、グサグサと心に突き刺さること間違いなし!