復活希望! 休載マンガ家列伝

マンガ

更新日:2012/10/14

 美内すずえの『ガラスの仮面』(白泉社)の最新巻(49巻)が、10月5日に発売された。

 2月に発売された48巻から約8ヵ月。「1年以内に出てくれてよかった」とホッとしたファンも多いのではないだろうか。というのも、『ガラスの仮面』は1975年の連載以来、休載に休載を重ねてきたマンガだからだ。とくに1998年からは10年にわたって連載を中断しており、再開されたときには「作中に出てくる黒電話が、携帯電話に変わっている!」という驚きの声もあがったほどだ。

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 しかし、人気マンガが休載するのは珍しいことではない。たとえば、あの井上雄彦の超人気マンガ『バガボンド』(講談社)も今年の3月まで1年半の休載を続けていた。いや、『バガボンド』や『ガラスの仮面』は、まだ連載を再開してくれたのだから全然オッケーだ。マンガ界を見渡せば、休載したままになって読者をモンモンとさせている人気作品はまだまだいっぱいある。

 まっさきにあげなければいけないのが、冨樫義博だろう。『週刊少年ジャンプ』(集英社)で、今年3月から『HUNTER×HUNTER』を絶賛休載中である。描く、休む、描く、休むを繰り返し、その休載っぷりは、マンガファンに「休載マンガ家といえば?」と聞けば、9割はこの名前が返ってくるほど。「体調不良」「週刊連載についていけないので、描きためている」「某オンラインゲームにはまっている」など、さまざまな休載理由が噂されているが、はっきりとしたことはわかっていない。

 『コータローまかりとおる!』(講談社)の蛭田達也も休載マンガ家のひとり。1982年から続く長期連載で、最終章と銘打たれた『コータローまかりとおる! L』を『マガジンSPECIAL』で描いていたのだが、2004年ごろより体調不良を理由に休載を続けている。どのように完結するか期待も高まっていただけに、ファンのモンモン具合も相当なものだろう。

 かつて『週刊少年ジャンプ』で『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』の作画として活躍し、『月刊少年ジャンプ』で『冒険王ビィト』の作画担当を勤める稲田浩司も2006年頃から病気療養で休載を続けている。しかも、休載中に連載誌である『月刊少年ジャンプ』が休刊してしまったのだ。『冒険王ビィト』は、テレビアニメやゲーム化もされたほど人気を集めた作品。このままでは、当時マンガやアニメを見てワクワクしていた少年たちが大人になってしまうのも時間の問題だ。

 驚いたのは、『週刊ヤングマガジン』(講談社)でルールなき「喧嘩」を題材にした格闘マンガ『喧嘩商売』を描き、人気を集めていた木多康昭だ。なにせ、マンガのなかで、冨樫義博の休載っぷりをさんざんネタにしていながら、自身もその2、3年後に休載してしまったのである。いくらルールに縛られていない格闘マンガを描いているといっても、ここまで型破りだとは。

 また、『月刊サンデージェネックス』(小学館)の人気マンガでアニメ化もされた『ブラック・ラグーン』の広江礼威、『ヤングキングアワーズ』(少年画報社)の看板マンガのひとつ『ジオブリーダーズ』の伊藤明弘、そしてあの、一大ブームを巻き起こした矢沢あいの『NANA』(集英社)も2009年から休載中だ。1週間や1ヵ月ならともかく、1年、2年も休まれてしまうと、ファンとしてはたまったものではない。

 実際、休載マンガ家の熱心な読者のなかには、その内容を忘れたくないために、週に1回は休載前の作品を読み返したり、その後の展開を予想して、再開に備えている人も続出しているらしい。

 もちろん、休載の理由には病気などのやむを得ないケースもあるのだが、それはともかく、マンガ界には『ゴルゴ13』(さいとうたかを/リイド社)という、40年以上も休載なしでがんばっている作品もある。マンガ家のみなさんにとって、休みなく作品を長く描き続けていくということは大変なことだと思うが、ぜひゴルゴを見習って「受けた依頼は必ず遂行する」という超人的な精神力でヒット作を生み出し続けていってほしい。