絶対読むべき! よしながふみの青春友情マンガ『フラワー・オブ・ライフ』

マンガ

更新日:2012/10/18

 『ダ・ヴィンチ』11月号では、男女逆転『大奥』の実写化で注目を浴びるマンガ家・よしながふみを大特集。なかでも「絶対読むべき!よしなが作品」として挙げているのが『フラワー・オブ・ライフ』だ。
 主人公は、白血病による闘病生活により1年留年し、復帰したばかりの高校生・春太郎。しかし同作は決して“闘病モノ”というわけではなく、高校生のスクールライフを描いた“青春モノ”としての側面も大きい。

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 ――『フラワー・オブ・ライフ』には理想的な青春がある。春太郎と翔太と真島はお弁当もクラブ活動も一緒。試験前には勉強会を開き、文化祭では創作劇を上演。「私も15歳に戻りたい!」と大人読者のツボを押しまくる。

 同時に、春太郎たちの青春は、私たちの日常の人間関係そのものでもある。友達になりたいのに嫌われたかもしれない。仲良しだと思っていたのに少し意地悪された。彼らの友情の煩悶は、些細だがとても重要だ。そしてそれは、私たちの誰しもが感じていることだ。煩悶に向き合うからこそ、彼らの日常は楽しく輝いている。その姿は、私たちの生き方のヒントでもあるのだ。

 よしなががすくい上げる感情の機微は、とにかく緻密だ。自分の言動は正しかったのか? 相手に嫌われたのではないか? つねに春太郎たちの心は揺れ動く。一見些細だが、この緻密さこそが人の心の本質だと思う。ゆえに私たちは、なかなか答えの出ない煩悶を抱えるのだ。

 彼らは、ただ煩悶するのではない。相手の心に向き合い、そこに友情が生まれる。それを可能にしているのは、互いの弱さを受け入れる優しさだ。人はすべからく不完全で弱い。だからこそ愛すべき存在なのだ。春太郎たちが自然に見つけているこの真実は、私たちの人生の大切な指針になるのではないだろうか。――(取材・文=小田真琴)

 また同誌では、春太郎たちの青春に心温かくなった読者へのおすすめ書籍6冊も紹介されている。

ダ・ヴィンチ11月号特集「よしながふみ 愛がなければ…」より)