伝説の泥棒たちが語る「こんな家は入りやすい!」

生活

更新日:2012/10/25

 ニュースや新聞を見ればわかるように、今の世の中、どこにでも犯罪はあふれている。

 いざ事が起こったら、頼りになるのは警察だが、できるなら、事が起こらないほうがありがたいもの。

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 じゃあどうすればいいか? そういうことは、その道のプロに聞いてみるのが手っとり早い。それも防犯のプロじゃなく、プロの犯罪者に。そんなスタンスで書かれた防犯の本が『犯罪者はどこに目をつけているか』(清永賢二、清永奈穂/新潮社)だ。

 この本では、さまざまな犯罪者にインタビューなどを行い、それらを通して、彼らが犯罪を犯すときに、どのようなところに注意しているかを分析。そこから、どうやって防犯につなげるかを教えてくれる。

 たとえば、夜道のひとり歩き。不意に襲われやしないかと心臓バクバクものである。こんなとき、どう注意すればいいのか。多くの路上犯罪者によると対象との距離が20m前後(電信柱の間隔くらいの距離)になったら「ここでやる、この獲物をやる、本気でやる」と決意を固めるらしい。なので、夜道にだれかがいれば、とりあえずはその人との距離を20m以上維持することが大切だ。

 空き巣や泥棒、強盗のケースも紹介されている。ここで登場するのが、犯罪者のなかでも天才的と評された大泥棒「猿の義ちゃん」。そのかわいらしい名前に反して、腕前も知識も、相当なものらしい。

 そんな彼が、とある家を狙いに定めたとして、どのようなところをチェックするのか。家の回りを2周ほどして、出したチェック数は36。隣家との距離からはじまって、雑草の伸び具合や干し物の順番と色、裏戸の出入り口の汚れ、衛星TVアンテナの有無なんてのも見ているらしいから驚きだ。いくらなんでも見すぎである。しかし、逆を言えば、プロの泥棒たちは、それほど入念なチェック(それも短時間で)をして泥棒を働いているということがわかる。

 そして、もっとも気になるのが、そんな人たちに目をつけられないようにするにはどうすればいいのか、ということ。じつは、泥棒に嫌われるポイントというのは簡単で、ズバリ、家と家の回りをキレイにしておけばいいのである。犯罪者は堀のらくがきや、ちらばったゴミ、家の前や回りで放置されたままの自転車などを見て、「この家は油断がある、入りやすい」と判断するらしい。なのでそれらは極力なくすようにし、できれば庭の木々の手入れなども入念に行うようにすればいい。それだけで「ちゃんと手入れしている=油断がない」と泥棒には映るのだ。

 また、もし犯罪者と鉢合わせした場合も考えておいたほうがいいだろう。そんなときは「噛みつき」が有効だ。「猿の義ちゃん」曰く、「人間がかぶりつく、というのはもの凄い力が出る。自分も1度ありましたが本当に困りましたよ。70歳くらいの婆さんでしたが、どうにも動けなかった。痛いなんてものじゃなくて思わず、うわぁ、イタッーって叫んだ。(中略)思い出しても震えます」。犯罪者に遠慮は無用。その腕に、足に、肌が見えているところに思い切り噛みついてやろう。逆に悲鳴をあげさせてやるのだ。

 ほかにも「猿の義ちゃん」をして「こりゃあ、盗人泣かせだ。やっかいなものを考えたね」と言わしめるほどの防犯装置「釣り糸センサー」の作りかたも解説してくれている。すごく簡単なつくりながら、効果は絶大らしいので、これはぜひともチェックしてみてほしい。

 と、実用的な防犯知識が身につく1冊だが、「犯罪者というのはじつにさまざまなことを考えているんだな」と思わず感心してしまう1冊でもある。なかでも「猿の義ちゃん」は登場回数も多いので、後々、彼のファンが出てこないとも限らない。「猿の義ちゃん」も、泥棒に入った家で「ファンなんです」と言われた日には商売あがったりだろう。そんな日がこないことを願うばかりである。