暑苦しいのにキュン! “ゴツい受け”に萌えるBL

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更新日:2012/10/31

 ファンタジーゆえか、リアルな男らしさよりも美しさを求める人が多いBL世界。キレイな男同士がイチャイチャしているところを見て癒されたり、萌えたりするのがスタンダードなかたちゆえ、筋肉ムキムキで男らしい受けや脛毛の生えたキャラはほとんどいない。

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 しかし、いま注目を集めている作家・内田カヲルの作品は違う。以前は内田かおる名義で描いていたのだが、その頃から受けはガチムチ体型で、脛毛どころか胸毛や尻毛に至るまで、しっかりと描き込まれているのだ。そんな毛むくじゃらのゴツい男が受けなんて……と拒否反応を示してしまう人もいるかもしれないが、一度読めば自分の中にあった固定観念が覆され、萌えの新境地を開拓できるはずだ。

 まず、内田カヲルが描くゴツい受けの魅力は、そのギャップにある。たとえば『飴と鞭』(竹書房)の主人公で、筋肉系オヤジの中学教師・上総が恋をするのは、蔑んだような目で見る中学生の教え子・長谷川。上総は放課後の教室で長谷川の体操服の匂いを嗅いでいたことがバレ、長谷川に脅されて校内でいたずらされてしまう。そして長谷川に「アンタ結構かわいいよな」と言われて喜んだり、捨てられたと思って授業を放り出してめそめそとトイレで泣いたりするのだ。ガタイも良くていい年した大人の男が取る、乙女みたいな言動。――見た目と相反するせいか、よりかわいく思えてしまう。

 スタントマンの半沢とモデル出身の俳優・小町が登場する『夢中になっちまえ!』(竹書房)も、そう。半沢は夜中に呼び出されても会いに行き、ごはんを作ってあげたりと、小町にかいがいしく世話をする。なかでも「そして続きがあるのなら」シリーズ (竹書房)の受け・編集者の坂口はまさに嫁状態で、マンガ家で恋人でもある藤代のために身の回りの世話からマネージャーの役割までこなす。短髪でガチムチ体型の彼らだが、思考は完全に乙女。そして、妻のように相手に尽くす姿は、まさしくギャップの極みだ。

 しかし、ゴツい受けのもっとも大きな魅力は、男らしく受けてくれるところにある。前出の「そして続きがあるのなら」シリーズの坂口と藤代のカップリングがいい例なのだが、エッチの最中は坂口に「ヤッてる時くらいビシッとキメろ!」と怒られ、藤代のほうが謝る始末。さらに、引越し業者が坂口に「ダンナー」と呼びかけると藤代を指して「ダンナはこっち」と平然と言ってのけるのだ。また、『明日もここで会おう』(『夢中になっちまえ!』所収)に登場するバレー部の顧問・草壁と元教え子の花村も、「つっこまれんのムリー」と叫ぶ花村に対して、草壁が「安心しろオレァ女だ」と言い放つ。……こんなふうに照れもせず自分が女役だと言えるのは、男前受けならでは。ゴツくて毛むくじゃらな身体も、その包容力の象徴のようにも思えてくる。
 
 でも、ゴツい受けの困ったところは、一度ハマると最後、キレイ系なBLでは物足りなくなること。あなたも剛毛&ムキムキのむさくるしさから、逃れられないかもしれない!?