「ブランドムック」の次は「キット本」ブーム?

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/26

 出版界に旋風と賛否両論を巻き起こした付録付きの雑誌やブランドムック。有名ファッションブランドのスペシャルアイテムが手に入るとあって、たくさんの本が大きな人気と話題を読んだ。今や「付録」はファッション誌を中心に雑誌の売り上げアップを狙ううえで欠かせない存在となっている。

そんな「付録」ブームを先駆けとして牽引したのが宝島社だが、同社は8月24日に新たな「付録」本をリリースした。それが『大人の工作キット ウクレレBOOK(組み立てウクレレ付)』。タイトル通り、楽器のウクレレの組み立てキットにウクレレに楽譜が読めなくても簡単に弾けるTAB譜集がセットになっている。もはや「本」というかウクレレに本がついている、といった印象だ。そんな点が旧来からの本好きにとって疑問を感じる部分なのだろうが、これはもはや「本」や「雑誌」とは別ジャンルのもの、としてとらえた方がいいのかもしれない。

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というのも、こうした「キット本」、同社以外からも続々登場しているからだ。たとえば『わが家のオーブンで焼く陶芸入門 この1冊で作れるキット』(遊タイム出版)は手軽に自宅で陶芸ができるというのがウリ。『家系図作成キット 和装本 家族の歴史をあなたの手でまとめてみよう』(日本法令)は、タイトル通り、家系図のイロハがわかり、なおかつ作成用キットもついている。

ウクレレにしても陶芸にしても家系図にしても、対象読者はブランドムックに比べて高年齢層であることは明らか。そこには新たな読者の発掘や拡大するシニアマーケットという狙いがあるのはいわずもがな、である。

しかし、理由はそれだけではない、というか、本当の理由は、この「キット本」に先行する成功例があるのだ。それが「キット本」の本家ともいうべき『大人の科学マガジン』(学研教育出版)。プラネタリウム、ピンホールカメラ、円筒レコード式エジソン蓄音機などなど、「大人」の知的好奇心をくすぐる付録で、数年前より人気を集めている。

大人の工作キット ウクレレBOOK(組み立てウクレレ付)』と『大人の科学マガジン』は価格帯もほぼいっしょ。つまり「キット本」に関していえば、先行している『大人の科学マガジン』に宝島社などの他社が挑んでいるという構図。仁義なき「キット本」の戦い、制するのはいったいどこなのだろうか。

文=池尾 優(ユーフォリアファクトリー)