お弁当競争がここまで激化! 半額弁当をめぐるバトルとは

マンガ

更新日:2012/10/31

 最近は、スーパーやコンビニでもお弁当の価格戦争が勃発している。以前は300円台で買えるお弁当なんてほとんどなかったが、今では300円台ですら高いほう。西友やイオングループのスーパーでは200円台のお弁当が当たり前になるほどだ。

 そんな価格戦争に負けず劣らず、弁当をかけて熾烈な争いが行われているラノベがある。それが『ベン・トー』 (アサウラ:著、柴乃櫂人:イラスト/集英社) だ。10月25日に9.5巻が発売されたこのシリーズ。実はただの弁当ではなく、閉店間際の半額弁当をかけて人々が争うのだ。

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 この作品に登場するのは、命懸けで弁当をゲットするためだけの部活「HP(ハーフプライサー)同好会」。カゴや割り箸を武器にして攻撃をかわしたり、猟犬群のようにチームを組んで周りの敵を押しとどめ、交代で全員が弁当をゲットするなんてこともあるが、基本的には体ひとつでの殴り合い。必殺技もなければ変な武器も出てこない、リアルな乱闘なのだ。それにオセロやチェス、格闘ゲームといったもので遊びながら戦略を鍛えたりもするが、特に練習や訓練といったものもない。毎日スーパーに通って戦い、経験を積みながら体に叩き込む。

 そんな「HP(ハーフプライサー)同好会」に入部した本作の主人公・佐藤洋は、“氷結の魔女”と呼ばれる先輩・槍水仙から、半額弁当をかけて戦いを繰り広げる人々について教えられる。スーパーマーケットで半額弁当を競う者たちには、暗黙のルールがあるのだ。例えば、半額シールを貼る店員のことを神と呼び、「神がバックヤードに帰るまで駆け出してはいけない」「その夜自分が食べる分以上のお弁当を捕ってはいけない」「獲物を捕った人を襲ってはいけない」。それを守って戦う人のことを“狼”と呼ぶのだ。

 ただし、彼らが戦う相手はそういったルールをわきまえた“狼”ばかりではない。現実世界でも、半額シールが貼られる前に買い物かごに入れておき、店員がシールを貼りに来たところでそっと棚に戻す人や、さらにずうずうしく「シール貼って」と店員に突き出すおばちゃんを見たことがないだろうか? そういった人のことを、本作においては“豚”と呼んで蔑み、お弁当を取られないようにカートを止めたりして妨害するのだが、なかには狼たちの制止も振り切り突撃してくる“大猪”と呼ばれる強者のおばちゃんも登場する。他にも、部活の合宿や文化祭前の準備期間など、学生が一気に買い占めに来ることを“アラシ”と呼び、時にはそんなヤツらとも戦うのだ。

 傍若無人な敵と戦う“狼”にとって、何よりも重要なものは何か? それは飢え、空腹である。お腹の鳴る音、なんとしてでも弁当を食べたいという気持ちが、彼らの原動力。そのため、戦いに行く前にはダッシュをしたり、3日間食事を抜いて戦いに挑んだりもする。そうやって戦って手に入れたお弁当の味が、美味しくないはずがない!

 一見すると、くだらないバトルに思えなくもない。しかし、人間の欲望であり、人生の大きな楽しみである“食”を、ここまでアクロバティックに描いてしまうことにこそ、本書のおもしろさがある。不景気が続く今、半額弁当をかけた熱い戦いが現実化する日も……近い!?