キョンキョンが薦めると本が売れる! 小泉今日子の書評の魅力

芸能

更新日:2018/2/5

  今年でなんとデビュー30周年を迎える小泉今日子。明日、11月2日(金)の21時からスペシャル版が放送されるドラマ『最後から二番目の恋』も好評を呼び、映画に舞台と大活躍。最近では米倉涼子や長澤まさみ、蒼井優といった後輩女優たちからもリスペクトされ、そのパワーはいまだ衰えることを知らない。

advertisement

 一方、キョンキョンといえば「初代アイドル書評家」としても有名。キョンキョンが愛読書として挙げた途端、その本が飛ぶように売れる……なんて現象もめずらしくなく、太宰治やよしもとばなな、ミヒャエル・エンデの『モモ』(大島かおり:訳/岩波書店) といった本を「キョンキョンが薦めていたので読んだ」という30~40代の人も多いはず。

 そんなキョンキョン、じつは2005年から読売新聞で読書委員として書評を執筆。こちらも評判が高く、“キョンキョン買い”する人も多いのだとか。一体、キョンキョンの書評にはどんな魅力があるのだろうか。

 まず第一に挙げられるのが、“体験を通して”本を紹介していることだろう。たとえば、4人の青年が派遣切りされ、立ち上がる姿を描いた『明日のマーチ』(石田衣良/新潮社) の書評は、「中学生の時、テレビの新人発掘オーディション番組に出演することになった。」というキョンキョンのヒストリーからはじまる。そして、本書の内容に踏み込んだ上で、「知らない道を歩くのは怖いけれど勇気を出さなければ何も始まらない。」「中学生の私に言いたい。勇気を出してくれてありがとう。」と綴っている。感動ポイントを挙げたり、分析に走ったりはしない。一貫して、自分が感じたままに書く。しかし、決して独りよがりではなく、“誰もが人生においてぶつかる問題や悩み”に触れて、自分に着地させるのだ。そのため、書評が陥りがちな押しつけがましさがまったくしない。

 次に、心をちくりとさせる印象的なフレーズが多いことも魅力のひとつといえよう。小学4年生の女の子と男の子が本の世界へ迷い込む『七夜物語』(川上弘美/朝日新聞出版) の書評では、「夜の世界で二人は懸命に戦う。応援しながら私も戦う。なぜか自分自身と。」 と、物語にのめり込む愉しさと、ときとして読書が自分との対峙の時間になることを滲ませる。また、『スウィート・ヒアアフター』(よしもとばなな/幻冬舎)では、「どんなに悲しいことが起こっても時は無情に進むと思ったことがある。でも、無情に進むからこそ、息をしたり眠ったり食べたり、人は生きてゆけるのかもしれない。」と、格言のように達観した言葉を紡ぎ出している。“そんな境地に立てる内容なのか”と思わず本を手に取りたくなる文章だ。

 そして、なんといってもセレクトの妙も、やはりキョンキョンならでは。東日本大震災で被災した学校の図書館に本を寄贈するという読売新聞のプロジェクト「読書委員が選ぶ“震災後”の一冊」では、『幸福論』や『パンセ』という普遍的な名作から、『方丈記私記』(堀田善衛/筑摩書房)や『津波てんでんこ―近代日本の津波史』(山下文男/新日本出版社)といった災害に関連した本をチョイスする人が並ぶなか、キョンキョンは昭和の文豪たちとの抱腹絶倒エピソードを深沢七郎が綴った『言わなければよかったのに日記』(中央公論社)を推薦。その書評では、「出来るだけ耳を塞いでいたかった。」と震災後の心境を述べて、しかし、本書にあふれる“おおらかなユーモア”に「私は救われた。」と書いている。――目線を変えられる。それも本がもつ魅力であることを、キョンキョンはよく知っているのかもしれない。

 元祖文化人アイドルの本領発揮。いまなお読書委員としての執筆を継続しているので、気になる人はまめに日曜読書面をチェックしてみてほしい。