知らずに摂取すると死ぬことも!? 身近に潜む、邪悪な植物

健康・美容

更新日:2012/11/2

 この世には「邪悪」といわれる植物が存在するという。しかも、そのいくつかは意外にも身近にある、と言われたら……。

 一般的に「植物」と聞いて思い浮かべるのは、日頃食べている野菜や目を楽しませてくれる観葉植物、森や林の木々のはず。どれも「邪悪」という概念からはほど遠いイメージ。むしろ、恵みを与えてくれる、人にとって有益なものだという認識があるはずだ。

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 そんな常識に一石を投じたのが、ニューヨーク・タイム誌でのコラム執筆などで活躍するエイミー・スチュワート氏。彼は著書で「人に危害を与える恐れのある植物」を紹介、大きな反響を呼び、アメリカでベストセラーとなった。それが、このたび日本でも発売となった『邪悪な植物』(山形浩生、守岡 桜:訳/朝日出版社)。

 では、どんな植物が「邪悪」なのか。例えば、キョウチクトウという植物。街路樹や庭木として、日本でもよく見ることのある種類で、白く美しい花は、きっと目にしたことがある人も多いと思う。一見、何の変哲もないこの植物が、実はかなり邪悪なのだ。エピソードをひとつ紹介しよう。

 かつて、BBQのための串として、庭に植えられていたこの植物が使われたことがあった。まっすぐに伸びた枝は、串に使うには最適だったのだ。しかし、キョウチクトウの枝には、猛毒があったのは誰も知らなかったため、枝からしみ込んだ毒を摂取したことにより、大量の死者や体調不良者を出してしまう結果になったという。

 植物であるから、いきなり襲って来たりはしないけれど、じわりと迫る脅威を孕んでいる。南米原産のコカや大麻などは麻薬にもなり、そのものの中毒者はもちろん、戦争をも巻き起こしてきた。ほかにも、コヨティロという植物は、一見普通の木なのだが、果実に猛毒がある。しかし、その効果がすぐには現れず、摂取したあと数日、もしくは数週間経ってから麻痺やめまいが起こるという。その瞬間はいつ現れるかはわからない。もし、自動車を運転していたら……などと考えると恐ろしい。

 そういえば、ショーン・ペンが監督・脚本を担当した映画『イントゥ・ザ・ワイルド』では、アラスカで暮らす主人公が食用と思って食べた植物が、毒を持ったまったくの別種だったというシーンもあった。

 さらに、本書には同シリーズの『邪悪な虫』がある。こちらは、人に危害を与えるおそれのある昆虫。病気や死をもたらすものや、畑や森林を壊滅させてしまうような、恐ろしい虫ばかりが紹介されている。たとえば日常的に接することも多い「蚊」。ただ不快であるだけではなく、種にによっては死にいたる病気やマラリアを媒介する危険をはらんでいるのだ。

 植物も昆虫も身近にいるものなのに、その実体についてはよく知らないもの。見慣れた顔であっても、ひょっとしたら素顔はとっても邪悪だった、なんてこともあるだろう。まずは本書で確かめてほしい。きっと、植物や昆虫への接し方や見方が変わってくるはずだ。ちなみに、著者はこれらの研究を進めるうちにどんどんとのめりこんでしまい、愛しくてたまらなくなったそうだ。くれぐれも深追いには注意していただきたい!?

文=小林昂祐(ユーフォリアファクトリー)