目指せ14股! 今、童貞男子の注目を集める『源氏物語』

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/26

 今、童貞男子たちの間で『源氏物語』が注目を集めているらしい。

 でも『源氏物語』といえば、紫式部よって書かれた、平安時代の物語。世界最古の恋愛小説ともいわれるように、才能に恵まれ、超イケメンのプレイボーイ「光源氏」が、さまざまな女性たちと恋愛を繰り広げるというストーリーだ。いわば、童貞男子から最も遠い話。それが、いったいなぜ童貞たちの熱い注目を集めているのだろうか……? その理由は、ある1冊のマンガに見ることができる。

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 マンガ『源君物語』(稲葉みのり/集英社)は、大学デビューを目指す源光海が『源氏物語』研究者の叔母・香子のアドバイスのもと、『源氏物語』を教科書に“現代の光源氏”となるべく14股を目指させられる、という物語。その教えは、たとえば、光源氏と同じく、最初は身内の女をものにしろというもの。つまり、従姉を狙えということなのだが、叔母の口からそんなことを言われた日には、源くんじゃなくてもキョドってしまうことは間違いない。

 また、そのひとり目が口説けないとわかると、即2人目を紹介するあたりもビックリだ。というのも、源くんとひとり目のヒロイン朝日との関係を、光源氏と朝顔の君の関係になぞらえて「朝日は恋愛が怖いから自分の気持ちを認めようとしない。他の女の存在があって、はじめて認めるんだ」と論じるのである。納得できる部分はあるものの、童貞男子には高いハードルである。

 小さいころに母を亡くした光源氏は、母性を求めて年上の女性をひっかけまくっていた。そんな光源氏を叔母は「マザコン」と言い、同じく幼いころに母を亡くしている源くんを「マザコン」と断定する。あまり好い気はしない源くんだが、叔母はそれが武器になると言い「思い切り甘えてこい」とアドバイスする。

 と、こんな感じでさまざまなとんでもない助言をする叔母に引っ張られて源くんは、脱童貞とともに現代の光源氏を目指し奮闘していくのだ。

 ちなみにヒロインたちも『源氏物語』に登場する女性たちを下敷きにしている。前述した「朝日」は、主人公と従姉であること、男に興味がなく文芸サロンのようなところに通っていた喪女であること、処女であることなどが、朝顔の君と同じである。また、2人目のヒロインとして登場した「葵」も、高飛車お嬢でデレがないツン、そしてファザコンなどが、葵の上と共通している。

 『源君物語』を見ていると、世界最古の小説といわれ、格調高い宮廷文学の『源氏物語』も攻略対象が多いハーレムもののギャルゲーみたいに見えてくるから不思議だ。これは、童貞男子に人気なのもうなずける話だろう。

 しかも、ギャルの落とし方まで参考になるとあっては、実は『源氏物語』は童貞のみんなの必読書だった! のかもしれない。しかし、天性のプレイボーイ光源氏のテクニックはなかなかハードルが高い。マネをするのはホドホドにしておいたほうがいいだろう。