広告効果は60億円!? 箱根駅伝「戦国時代」の裏側

スポーツ・科学

更新日:2012/11/7

 正月の風物詩である箱根駅伝。その予選会が10月21日に行われた。予選ながら当日の様子がテレビ中継されるなど、相変わらずの高い注目度である。その人気に呼応するように、今、大学駅伝は新旧の大学が壮絶な戦いを繰り広げており、「戦国時代」と表現されている。

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 今回の予選会でも40年連続で本戦出場を続けていた東海大が落選するなど、伝統校でも何が起こるかわからない。箱根駅伝と合わせて“大学三大駅伝”といわれる出雲駅伝では近年、力をつけてきている青山学院大が優勝。しかし、11月4日に終えたばかりの全日本大学駅伝では駒澤大が優勝と上位常連校が巻き返し。国民行事と化した箱根駅伝のおもしろさは、各校の“国取り合戦”でさらに深まっているといえる。

 箱根駅伝の歴史や舞台裏を詳しく解説した『箱根駅伝』(生島 淳/幻冬舎)など関係書籍でも触れられているように、大学がこぞって駅伝に参入する背景には少子化時代の大学の苦しい台所事情がある。大学全入学時代を迎え、学生の確保は各大学にとって最重要課題。人気校でさえ学生集めに躍起になっている中で、箱根駅伝が受験生に与える影響は大きい。視聴率30%近くを記録する箱根駅伝で大学名が画面に映ることは、大会終了後、まもなく始まる大学入試の出願者数に大きく関係するというのだ。

 たとえば「新・山の神」柏原竜二を擁し、2009年に初の総合優勝を飾った東洋大学。この年の志望者数は前年比1万人増の6万9000人。受験料だけでも4億円近い収入を大学にもたらした。駅伝の強化費は億単位とも言われるが、それだけで元はとれてしまう。さらに、優勝した大学の広告効果は60億円という試算もある。箱根駅伝は大学の生き残り、ブランド戦略において、とても大きな役割を担っているのだ。

 それだけ莫大な経済効果が見込めれば、現場でお金が動くは当然だ。有力な選手を獲得するために、授業料免除は当たり前、あらゆる手を使って両親や顧問を口説き落とすことは関係者の間ではよく知られた話である。“親が突然、いままで気にも留めていなかった大学を薦めるようになった”。ことを経験した学生も少なくないとも聞く。また、その象徴としてあげられるのがケニア人留学生だろう。留学生と言えば聞こえは良いが、多くの選手はケニアにいる家族の生活費援助を受けるなど、実態はほとんどプロである。

 予選会が終わり、いよいよ本戦へのカウントダウン。箱根駅伝の裏話を知れば、これまでとはまた違った角度で正月の観戦を楽しめるかも!?

文=吉原 真