また南ちゃんに会える!? あだち充、新作『MIX』を語る

マンガ

更新日:2012/11/9

 数々の青春マンガの金字塔を紡いできたあだち充。2008年に単行本累計発行部数が2億冊を突破してからも、第一線で活躍しつづけている、永遠の少年マンガ家だ。10月には、『タッチ』の26年後が舞台である『MIX』の第1巻が発売されたばかり。

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 『ダ・ヴィンチ』12月号では、デビューから42年、青春マンガ一本で勝負し続けてきたあだち充を大特集。10ページにわたる独占インタビューでは、新作『MIX』への想いも語っている。

最新連載『MIX』は、『ゲッサン』12年6月号に第1話が掲載されるや、話題沸騰。掲載誌『ゲッサン』が完売&増刷し、熱狂の声が高まっている。

 『タッチ』の明青学園が甲子園優勝を果たしたのは、1986年。その26年後の明青学園が、『MIX』の舞台だ。主人公は立花投馬と立花走一郎、ピッチャー&キャッチャーの兄弟。ヒロインは、ひとつ年下の妹・立花音美。甲子園に出られたのは、優勝した年の一度きり。その後、低迷期が続く明青学園野球部には、不穏な空気が漂っている――。

 「明青学園を舞台にするっていうのは編集者(『ゲッサン』編集部・市原氏)の希望だったんですよ。『明青学園をもう一度、甲子園に連れていってください』って」。まるで「南を甲子園に連れてって」と言った、かつてのヒロインのような発言!

 「そいつは、いかつい男です(笑)。『タッチ』の続編という意識はね、あんまりなかったんですよ。普通に考えて、明青学園は今でもあるよなあと。代は変わっても、学校は続いているんだから、今の世代が甲子園を目指すっていうドラマがあってもいいなって思ったんです。こんなに反響が大きくなるとは思ってなかったんですよ。気楽に始めたんです」

 しかし、読者の熱い反響を受けて、意識も変わった。「だって、いろいろみんなが言うからさ」と苦笑い。例えばこんな意見がある。南ちゃんは単純計算で、44歳。いつか登場するのか?

 「一応そこらへんの設定は全部、書き出してはいますね。何歳になってるとか、間違えると大変ですから。(登場人物の)親父たちと達也は、年齢的に同じ代の野球部じゃないなぁとか、そういう計算はちゃんとしながらやってます。今のところ、先のことはまだ何も考えてないんだけどね。いろんなやり方はあるなという感じです。ヘンに裏切ったりするのはイヤだし、読者の想像を刺激する部分は刺激させてあげようという感じですかね」

 「今描いてるマンガの話はあまりしたくないなぁ」と、ポツリ。

 「自分でもまだわからないんですよ。単行本の3冊くらい溜まらないとわからない。いつもそうなんだけれども、1巻で主人公たちがしゃべったセリフとかを受けながら、その先の話を展開していくんですね。描いた時は気にしてなかったセリフとかを拾い出して広げてみたりして、自分でも思ってもいなかった方向に行くのが楽しい」

 インタビューではほかにも、『MIX』というタイトルの意味や、あだち自身の高校生活やデビューまでの経緯、作品やマンガに対する想いなどを語っている。

取材・文=吉田大助
ダ・ヴィンチ12月号「あだち充特集」より)