「気持ち悪い」のがいい! ピュアすぎるBLにハマる人続出

BL

更新日:2012/11/15

 10月25日に発売されたコミック『宇田川町で待っててよ。』(秀 良子/祥伝社)は、女装男子である高校生・八代と、八代に一目惚れして追いかけ回す同級生・百瀬の物語。八代を好きすぎて空回りしてしまう百瀬の言動が、「気持ち悪い」「気持ち悪いのが、いい!」と話題を集めている。カバーを外した表紙の部分に描かれているマンガを見てもわかるように、作者やアシスタントの間でも「気持ち悪い君」と呼ばれるほど。美しい表紙のBLのメインキャラが「気持ち悪い」って? しかも、どうやらその「気持ち悪い」のが「いい!」らしいのだが……。百瀬の、気持ち悪いと言われる空回りっぷりを見てみよう。

 背は高いが、目が隠れるくらい長い前髪のせいで、どこかぬぼーっとした印象を与える百瀬。クラスにいるときはたいていひとりで寝ているか、イヤホンをつけて音楽を聴いている。そんな彼が、八代に一目惚れしてから少しずつ変わっていくのだ。

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 八代が教室で男子に肩を組まれたり、彼らとじゃれ合っている姿を見るとハラハラしたり、体育の時間や授業中、昼ごはんを食べているときでさえ心ここにあらずといった感じで、ずっと八代を見つめている。たまたま八代と目があったときなんて、びっくりして鉛筆を折ってしまうほど。そして、お嬢様学校の制服を眺めている八代を木の影からじっと見つめ、いきなり「制服とかは着ねーの? 似合うと思う」と話しかけたりもするのだ。さらに、八代を放課後の体育館裏に呼び出したり、姉の部屋からパクった服を彼に着せようとしたりするのだが、拒否されると急にキレて「やだじゃねー着ろや じゃねーと力づくでひんむくぞ」と脅して迫ったりする。

 気持ち悪いを通り越して、ちょっぴり怖い気もするが、これらはすべて八代に対する百瀬の精一杯の愛情表現なのだ。ただ、普段からあまり人と接しない百瀬は、好きな人にどう接したらいいのかわからない。急にキレてしまったのも、せっかく女物の服をプレセントしたのに、全然着てくれない八代に戸惑っていただけなのだ。

 よく考えてみて欲しい。自分が誰かを好きになったとき、今相手は何をしているのか、好きな食べ物は何か、彼女はいるのか。あれこれ考えて妄想したり、姿を見ればついつい気になって目で追っていないだろうか? さんざん百瀬のことを気持ち悪いと言ってきたが、恋をすれば誰だって多少気持ち悪くなる。好きな人と接する時、緊張して空回りし、上手く想いを伝えられない人もいるだろう。初めて恋をした百瀬が、そんなふうに空回ってしまうのも仕方ないことなのだ。

 それを踏まえて見てみると、八代に声をかけられると緊張しすぎて真っ赤になり、家に帰ってそのことを思い出してはぬいぐるみを抱きしめたまま悶える百瀬の姿だって、なんだか可愛らしく思えてくる。喧嘩した時に無言で八代の後をついて行く姿なんて、叱られた大型犬がしゅーんとして飼い主について行ってるようにしか見えない!

 それに、八代の女装姿を見て「キモ」と言った姉に対しては、街中にも関わらず「バカ言ってんなブス てめーの百億倍かわいいわ」と大声で言い放つし、どうしたら八代は自分のことを好きになってくれるのか真剣に悩んだりするのだ。今どきこんなに男らしい男がいるだろうか。彼はただ八代が女装している姿に惚れて、もっと自分だけにその姿を見せてほしかった。八代をビビらせて泣かせてしまったときも、単に彼に触れたかっただけ。でも、不器用な百瀬はそれを上手く伝える術を知らなくて、もっと「大事なものみたくできればよかったのか」と後悔して泣くのだ。

 そこまで一途に思われて、自分の女装姿も「かわいい」と言ってくれる相手が現れたら、好きになるなという方が無理な話だろう。百瀬がこれほどまでにまっすぐぶつかっていけるのは、それだけ必死で真剣に恋しているから。そんな彼の姿が魅力的なのは当たり前。むしろ、健気で純粋すぎてまぶしいくらいだ。

 たとえ初めは相手に気持ち悪がられたとしても、結果的に思いが通じ合えばそれでいい。ときには百瀬みたいに、正面から相手にぶつかってみるのもいいかもしれない。