もしもオタクの英才教育で育てられたら……

マンガ

更新日:2012/11/16

 ゲームが好きすぎてゲーム会社に就職した父と、アニメが好きすぎてアニメーターになった母。日曜は毎朝4時に起きて家族全員で録り溜めたアニメを見る。イベントでは「伝説のオタ芸」と呼ばれるほど完璧なオタ芸を披露し、親子の交流にもゲームを使う。幼い頃からこんな両親のもとで育ち、“オタク”心を仕込まれた子供は一体どんなふうに育ってしまうのだろうか?

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 10月31日に発売されたライトノベル『ラブコメ圏外』(内堀優一:著、かわいそうな子:イラスト/ホビージャパン)は、そんな2次元を愛する両親の間に生まれた高校生・井口銀次朗が主人公。小学校低学年のころには既にアイドルよりも「俺の二次元嫁の方がかわいい」と思っていたほどの早熟なオタク。しかし、高校入学を機に“普通の高校生”デビューするべく奮闘するのだ。

 “普通の高校生”に憧れている銀次朗は、まず入学式の時に配られた総ページ数892ページにも及ぶ学校概要を穴があくほど読んだ。そして、普通の高校生になるために、普通の高校生を研究する部活を作ろうと試みたりもする。普通の高校生は放課後どんなところで遊んでいるか聞き込み調査をしたり、ギャルゲーを参考にしようとしたりするのだ。ここでギャルゲーを参考にしようとするあたりは、さすがオタクエリート。普通の高校生だというゲームの主人公たちが、必ずラブコメに巻き込まれることから、そのラブコメ圏内に入れば“普通”の称号が得られるのでは? と考えるのだ。

 また、クラスメイトに放課後空いているかと訊ねられたときは「もちろん空いているさ。なにしろ普通の高校生だからね。普通の高校生である以上、放課後は常にがらんと空けてある」とやたらと“普通”を強調。

 そして、クラスメイトとカラオケに行く時はボカロやニコ動など、ある特定のジャンルでしか歌えない“縛り”がないのかやたらと確認するし、ないと知るとひと安心する。店員にカラオケの機種を訊ねられて「なんでもいいっす」と言うクラスメイトには、ボカロとかアニソンとかニコ動とかアニメ本編の流れる機種じゃなくてもいいのかと迫り、「それがどうした」と返されて驚愕するのだ。極めつけは、アニソンなんかが流れると体が勝手に反応してしまい、ついつい父親に仕込まれたオタ芸を披露してしまうこと。カラオケで、伝説と言われるほど完璧なオタ芸を披露できる高校生なんて、なかなかいない。

 友達からノートパソコンを借りるときは「心配するな! 秘密のフォルダー、およびマイピクチャー、マイドキュメント、検索履歴は絶対に見ない!」と細かいところで気遣いを見せるが、その友達が「俺のノートパソコンにそういったものは入っていない」と言うと信じられないという顔をするのだ。

 しかし、最近ではオタクがわりとライトなものになり、世間にも浸透してきた。銀次朗のエピソードを見て「あるある」なんて思った人も、実は結構いるのでは? その様子を見ていると、両親ともにオタクなんて当たり前。むしろ、オタクじゃない人の方が少なくなって、こんな“オタクエリート”の子どもの方が“普通”と呼ばれる時代が来るのかもしれない!?