「うつ」を理解し、向き合うヒントになるマンガ5選

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更新日:2012/11/16

 2011年に宮崎あおい・堺雅人主演で映画化された『ツレがうつになりまして』(細川貂々/幻冬舎)や、10月17日に発売されて現在ネットなどを中心に話題を呼んでいる『メンヘラちゃん』(琴葉とこ/イースト・プレス)など、ここ最近、「うつ」を描いた漫画作品がみられるようになった。世界保健機関(WHO)の調査によると、現在、世界で3億5000万人ほどがうつ病であり、また日本においても最近若手社員に「新型うつ」が増えていることが問題になるなど、世相が反映されていることは間違いないだろう。

 自分自身が「うつ」の場合だけでなく、身近な人の中にも「うつ」で悩んでいて、周囲に相談したり悩みを打ち明けたりすることができずにいる人がいるかもしれない。「うつ」を理解して、悩んでいる人との距離を縮めていくためにはどうすればいいのだろうか。

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 そこで今回は、「うつ」を理解し、向き合っていくためのヒントとなるような漫画を5作選んでみた。

■『メンヘラちゃん』(琴葉とこ/イースト・プレス)
女子高生で漫画家の琴葉とこ氏が中学時代にウェブ上で連載していたものを単行本として漫画化。心が不健康な「メンヘラちゃん」と、身体が不健康な「病弱ちゃん」、特に何もない「けんこうくん」の3人の日常が描かれている。前半では「メンヘラ」という言葉をキーワードとしたブラックなユーモアに笑いをさそわれる。しかし、後半は次第にシリアスになり、それぞれの抱える現実的な問題が浮き彫りになっていく。その中でも、3人がお互いのことを思いやりながら歩み寄り支えあっていこうとする姿勢に、共感を覚える人も多いはずだ。

■『ツレがうつになりまして』(細川貂々/幻冬舎)
漫画家の細川貂々氏がうつ病を患った夫(ツレ)との生活を描いたマンガ。ある朝、まじめな顔で「死にたい」とつぶやいたツレさん、そこからうつ病と向き合いながら、夫婦で生活を見つめなおすことになる。うつ病という重いテーマを軽くやわらかいタッチの絵柄と随所にちりばめられたユーモアで気負わずに読ませてくれる。そのエピソードから病との付き合い方や、闘病の方法などが見えてくる。

■『ブラックジャックによろしく』(精神科編)(佐藤秀峰/講談社)
永禄大学卒の研修医、斉藤英二郎がその研修先で起こる事件を通して、現在の医療問題に迫っていく物語。「精神科編」では、家族や社会からの偏見に真っ向から向き合いながら、患者との交流を深めていこうとする姿が描かれ、現場の苦悩や問題点がわかりやすく理解できるだけでなく、人それぞれの葛藤や想いがひしひしと伝わるものとなっている。

■『NHKにようこそ!』(滝本竜彦:原作、大岩ケンヂ:作画/角川書店)
ひきこもり歴4年の佐藤達広が、友人とエロゲー製作を目指しながら、謎の少女、中原岬と社会復帰を目指す物語。「NHK」とは、「日本ひきこもり協会」の略称だ。漫画版は、原作とキャラやストーリーが異なり、対人恐怖症や薬物依存症などが登場し、それぞれのキャラクターが傷つきあいながら交流を深める様が描かれる。ラストシーンの佐藤のあのセリフに救われたと思った人は決して少なくないはずだ。

■『マンガで分かる心療内科』(ゆうきゆう:著、ソウ:イラスト/少年画法社)
精神科医のゆうきゆう氏による作品で、うつ病、適応障害などを分かりやすく紹介している。基本的には明るいタッチでギャグがふんだんに盛り込まれており、その症状や治療などが詳しく解説されている。まずは正しい知識を得た上で、風説や偏見にまどわされないようにすることも必要かもしれない。

文=ゆりいか

『メンヘラちゃん』の作者 現役女子高生・琴葉とこの本棚はこちら