読んでどうなっても知りませんよ! 恐怖の王による伝説のトラウマコミック

更新日:2012/11/19

地獄の子守唄

ハード : PC 発売元 : ムービングマンガカンパニー
ジャンル:趣味・実用・カルチャー 購入元:電子書店パピレス
著者名:日野日出志 価格:210円

※最新の価格はストアでご確認ください。

マンガ史上最大のトラウマ作品は何か? そんなアンケートを取ったとすれば、間違いなく上位にランクインする伝説のホラーマンガである。作品はまずこんな警告によって幕を開ける。
「わたしはこれから狂気と異常にみちたおそるべき告白をしようと思っている」
「もしこれを見て気分が悪くなったり、あなたの身の上になにかがおこったとしても、わたしはもちろんのこと編集部も責任を負わないからそのつもりで!!」
黒く塗られた背景に、目玉をギョロリと見開いた、気味の悪い作者の自画像が浮かんでいる。かなり怖い。この時点で、次のページをめくるのに相当な勇気がいるが、がんばって読み進むとさらなる恐怖が読者を待ち受けている。

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物語の主人公はマンガ家・日野日出志だ。彼は幼い頃から気味の悪いもの、グロテスクなものに興味を持っていたが、不幸な家庭環境のせいもあって、しだいに異常な子に育っていった。地獄の支配者となって人びとを惨殺することばかりを夢想している彼は、いつか「ほんとうに人間を殺したらどんなにたのしいことだろうか」とさえ思うようになる。

そんな主人公には、なんとある不思議な力が備わっていた。彼が死んでほしいと強く願った相手は、なぜか必ず悲惨な最期を遂げてしまうのだ。いじめっ子グループ、気の狂った母親、憎い編集者。主人公は気に入らない相手を、無気味な子守唄を歌いながら、次から次と血祭りにあげてゆく。

そして…いよいよマンガ史上屈指のトラウマシーンが訪れる。物語の結末で、主人公は最大級の呪いを投げかけるのだ。その相手とは…これは言わぬが花だろうが、読者はこの作品を読んでから3日間、恐怖のあまり眠れない夜を過ごすことになる。

もちろん本作は、自伝のように描かれてはいるが完全なるフィクションである。現実の日野日出志氏は殺人狂ではないし、実母を呪い殺してもいない。しかし、この作品には「ひょっとしてこれって実話では?」と思わせる異様なオーラがある。神経質なタッチの絵柄と、異常きわまるエピソードの数々が相まって、なんともいえない凄みを発散している。何度読み返してもため息の出る(そして、なぜだかわたしは泣いてしまう)、神がかったホラーマンガの傑作なのである。

この電子書籍版は1巻に「地獄の子守唄」「胎児異変 わたしの赤ちゃん」を、2巻には「恐怖列車」「蔵六の奇病」をそれぞれ収録している。「蔵六の奇病」はグロテスクと抒情性が見事に融合した、もうひとつの代表作。この2冊を読めば、恐怖の王・日野日出志の神髄に触れることができる。いやあ、日野日出志のいる国に生まれて、本当によかった。


のっけからこんな怖い警告が。さあ、読むのか、止めるのか!?

主人公は日野日出志。怪奇と恐怖に取り憑かれたマンガ家だ

少年がいつも危ないことばかり考えていると…

それが現実になったのであった!

同時収録「わたしの赤ちゃん」は著者お得意の哀しいミュータントもの