澄んだ森と、心地よいピアノの音と、2人の少年の熱い友情と

公開日:2012/11/22

ピアノの森 (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:一色まこと 価格:540円

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そうか。ピアノはひとりで練習して、勝手にうまくなるものじゃない。だって、ピアノを弾くのは人だもの。人が生きていくためには、たくさんの人との関わりが必要だもの。たくさんの人と関わり、ときにぶつかり合いながら、感性が磨かれて、その人の音がつくられていく。ピアノの世界は深い。

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なんてことを思わせてくれる本作は、タイトルのとおりピアノを題材としたコミック。2人の少年がピアニストとして切磋琢磨しながら、才能を開花させていきます。ひとりは絶対音感を持つ天才肌の一ノ瀬海(いちのせ・かい)。もうひとりは、ピアニストの家系に生まれ、幼いときから英才教育を受けている秀才肌の雨宮修平(あまみや・しゅうへい)。1巻では、2人の出会いと、そのきっかけとなった町外れの「ピアノの森」を中心にストーリーが展開します。

ところで、自分の小学校時代を振り返ってみると、音楽の授業が嫌いではなかったものの、なぜ義務教育で音楽を勉強せねばならないのか、という疑問が心のどこかにありました。音楽を勉強することが、将来、どんな役に立つのか。文部科学省による小学校の学習指導要領は2008年に新要領へと改訂、2011年から全面実施がなされていますが、新要領への移行後も、音楽科の教育目標は変更されていません。

つまり「表現及び鑑賞の活動を通して、音楽を愛好する心情と音楽に対する感性を育てるとともに、音楽活動の基礎的な能力を培い、豊かな情操を養う。」という基本理念のもとに内容が構成されているわけです。そうか、音楽ってそういう目的で勉強していたのか、と20年以上も経ってから知る自分がここにいます。

ちなみに、改訂のポイントのひとつに、「…音遊びや即興的に表現することを通して音の面白さに気付いたり、音楽づくりの様々な発想をもったりすることを重視するなどの内容の改善を図った。…」(小学校学習指導要領解説・音楽編より)というものがあります。

なるほど、確かに音の面白さに気づくと情操が豊かになるのかなー。絶対音感の持ち主って、やっぱり音の面白さへの気付きが常人とは違うのかなー、などと思いそうですが、どうやら絶対音感が備わるというのはよい面ばかりではないようです。例えば、時計の音やブザーなど身近にある音もドレミ…で聴こえるので、煩わしく感じるときもあるとか。そういう意味では、人によっては音の面白さを純粋に楽しめないのかもしれません。

2巻以降では、天才と秀才を隔てる壁から2人が衝突する場面もあり、物語がドラマチックに展開していきます。ピアノに興味がある方もない方も、熱い友情物語をゼヒ。


2007年にアニメ映画化、翌2008年には第12回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞しているのも納得の感動作で、生涯の愛読書のひとつにしているファンも多い名作

小学生らしさに思わず吹き出しそうになる場面も

心地よい音が画面の外にまで聴こえてきそう

森の中にピアノがあるナゾも解き明かされていきます
(C)一色まこと/講談社