読書の喜びと楽しみを深めてくれる、日本語や読書に関するエッセイ集
更新日:2012/3/7
これは阿刀田高が新聞・雑誌に発表したエッセイをまとめたもの。読書や文章作成のための指南書のようなタイトルから得る印象ほどではないが、やはり日本語や読書について書いたものが多い。その理由として、阿刀田氏はあとがきで、「日本語や読書についてのエッセイが中心となったのは、これが文化として、教養として大切なものであり、-日本語への愛着が薄れ、読書が衰退したら日本は滅びる-と、私自身かなり本気で危惧しているからだ」と述べている。
同じような危惧を感じて、または日本人が気づきにくい日本語の美しさやユニークさを知ってもらおうと、日本語に関するエッセイを書いている人は多い。私もレビューでいくつかそういう本をご紹介してきた。その中でかなり多くの人-いや、ほとんどの人と言ってもいいと思う-が、小学校で英語を教える是非について、一見、今日のグローバル化に逆行するかのような否定的な考えを持っているのは示唆的だ。
阿刀田氏もそうで、「日本語の考え方を十分に発達させないうちに異質な考え方を導入するのは危険なことではないのか」と述べている。今でも英語のヒアリングに四苦八苦する私は、子供のうちに英語の耳だけでも養っておけばどんなにらくだったかと痛切に感じているので、かつては小学校から英語教育を始めればいいのにと思っていたひとり。だが、私も、日本語の基礎ができないうちに英語教育を始めることに対して疑問を持つようになった。母国語と外国語の習得を同じレベルで考えることが、そもそもおかしいとも言える。
ヨーロッパ圏の人達が何国語も自由に操れるのは、似たような言語だから。構造的にも音声的にも独特な日本語を母語とする多くの日本人は、外国語の習得にはたしかに大きなハンディがある。でも、それはユニークな文化を担っているからだと考えたい。
新聞や雑誌に発表されたエッセイをまとめたもの。目次をクリックすればそのページへ飛ぶ。興味のあるところから気軽に読んでみよう