きっとみんなも騙される! 第一人者が描く痛快本格推理小説

小説・エッセイ

公開日:2012/11/29

葉桜の季節に君を想うということ

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:歌野晶午 価格:540円

※最新の価格はストアでご確認ください。

本格推理小説の第一人者、歌野晶午の2003年の作品で、2004年には「このミステリーがすごい!」で堂々の1位を獲得した作品がこの『葉桜の季節に君を想うということ』。このミス以外にも日本推理作家協会賞・本格ミステリ大賞など獲得したタイトルは数知れず。であるが故に、個人的には若干敷居の高い作家ではあったのだが、こちらもここ数年は膨大な量のミステリを読破してきた。良いタイミングだと思い、手を出してみた。

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…大口を叩いておきながら実に不甲斐ない感じなのだけど、完全に騙されました! 本格ミステリにしては軽めの文体で思った以上に読みやすいし、場面・語り部が次々と変化する構成なのにもかかわらず、あまり煩わしさを感じない。最初は正直「本格ってこんなもんか?」的な感情も沸き起こったのだけど、これはおそらくラストのひっくり返しを演出するための巧妙な戦法。効果は絶大で、クライマックスに差し掛かったところで思わず呻いてしまったほど。いやもう、お手上げの巧技です、コレは。

ネタバレが怖いので内容はあまり詳しく触れたくないのだが、とにかく叙述トリックの完成形と言って過言のない作品。その中にちゃんと人情味とか爽快感、ユーモア等の要素もぎっしり詰まっており、もちろん各所で張り巡らされる伏線に拾い忘れは一切無い。読み応えはかなりのレベルで、本格以外のミステリファンも含め、おそらく誰が読んでも爽やかに騙されそう。

さらに感服したのは『葉桜の季節に君を想うということ』という、ある種意味深で印象的なタイトルにすら最終的に決着を付けてしまうところ。結果、モヤモヤ感が一切残りませんでした!

最初から最後まで、穴や綻びの見当たらない本当に見事でさすがな仕事。ミステリ好きの人はもちろん、そうでない人たちにもぜひ!


文庫本と同様の表紙画像はありがたいが、もう少し解像度が高いとありがたい

紀伊国屋BookWeb・Kinoppyの画面構成は他を圧倒する美しさ、読書時のフィーリングは紙の本にかなり近い

巻末には用語解説&歌野晶午著作紹介、資料としてもちゃんと使える造り

文字の大きさはもちろん、表示や余白までカスタマイズできる必要充分な設定画面

ヒストリー機能付き検索画面は何気に使用頻度の高い便利な機能