どうなっているのか知りたい! を刺激する怪作

公開日:2012/12/18

消えちゃえばいいのに

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / 富士見書房
ジャンル:ライトノベル 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:和智正喜 価格:450円

※最新の価格はストアでご確認ください。

これ、ライトノベルですから。読む方だって、そのつもりで読み始めるじゃないですか。そうすると、数ページも進まないうちに「あれれ?」ってことになる物語です。

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数ページと間を置かずに、次々と人が死んでいきますよ。もうね、『バトル・ロワイアル』なみのペースです。でも、あの『バトル・ロワイアル』にしたって最初に世界観を開陳しているわけですよ。本作『消えちゃえばいいのに』にはそれがない。第0章にあるのは、4人の女の子から告白されるという、いかにもライトノベルっぽい展開だけ。しかしそれすら、どこか不気味な雰囲気が漂っていて…。さらに登場人物がパッと消えてしまったり、場面が跳んだりと、読者はとことん振り回されます。

一歩間違うと、読者を置いてけぼりにしてしまうような小説なのに、「この世界ってどうなってるんだ!?」と最後まで引っ張っていく力があるのはひとえに構成力の高さなんだろうな、と思いましたよ。読者が飽きる前に、展開を忘れてしまう前に、次の仕掛けが発動するんです。章が短いのも、節が細切れなのも、すべてそういう計算の上でやっているんでしょうね。

著者の和智正喜さんはライトノベル一筋の作家ではなく、漫画原作から脚本まで幅広く活躍されているんです。様々なメディアを渡り歩いてきた方ならではの小説ですね。

あとがきで知ったのですが、この作品の企画が立ち上がってから刊行までに2年ほどかかっています。通常のライトノベルのサイクルではないですよ。2年といったら、デビューした作家が3冊書いて消えているか、さもなくばシリーズ累計で何万部とかっていうスパンです。版元にとっては冒険、作家にとっては挑戦。ライトノベルは何でもあり! というのが個人的見解ですが。それでも異端というか野心作と呼ばせていただきたい怪作です。


理由もわからぬまま、殺される100名のリスト。こんな挿絵ライトノベルにあったっけ?

しかも、きみのために殺されると宣言される

はかなげなヒロインのひとり。だけど、存在感は他のライトノベルとはまったく異質

読者は最後まで<殺人者>という表記に悩まされ、振り回される