1冊で読み切り! 『ジョジョ』に引き継がれる荒木飛呂彦の“こだわり”とは?

公開日:2013/1/8

バオー来訪者

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 集英社
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:荒木飛呂彦 価格:500円

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2012年10月からテレビアニメが放送されているのもあって話題沸騰の『ジョジョの奇妙な冒険』。
今さらながらカリスマ的人気を誇る同作ですが、いわゆる「ジョジョ立ち」や、唯一無二な擬音の使い方、セリフなど、作者・荒木飛呂彦のこだわりに「そこにシビれる!あこがれるゥ!」と胸を焦がすファンは多いことでしょう。

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しかし、『ジョジョ』だけで荒木飛呂彦作品を知った気になっているのはもったいない。『週刊少年ジャンプ』で『ジョジョ』の連載が始まる2年前に、17話の掲載で惜しくも終わってしまった『バオー来訪者』。この隠れた名作に、作者のこだわりがギュギュっと詰まっているのを知っていただきたいのです。しかも、電子版ならたった1冊で読み切り。ページ数が多いビックボリュームなので、超おトクです。

本作は、ある秘密機関に追われる少年と少女の物語。主人公の少年は、機関に実験体として体をいじられています。恐るべき実験内容とは、寄生虫であり最強の生物兵器「バオー」を脳に寄生させること。この寄生虫こそが、本作のキー。少年の身に危険が迫ると、脳に宿ったバオーが防衛本能を発動し、超人的なパワーと能力によって機関の魔手からことごとく逃れます。

イタリアの彫刻芸術から着想を得て作り出されたといわれる「ジョジョ立ち」の前身型が随所に見られ、また、物語が盛り上がるほどに「ドーン」「バァーン」「ドッギャーン」など『ジョジョ』の代名詞のひとつでもある特異な擬音がスペース狭しと踊ります。変身をするときの「バルバルバルバル」は本作ならではの擬音。「これが『ジョジョ』につながっていくのか!」と思わず感慨にひたってしまった私です。

しかし、言わずもがな、本作の魅力の本質はポーズや擬音などといった“仕掛け”ではありません。作者が「あとがき」で綴っているとおり「生命の賛歌」が最大の魅力であり、骨太な人間肯定が『ジョジョ』に繋がっていくのです。保育や教育においても、身近な命を知り、触れることで、いのちの大切さをさまざまに子どもたちへ伝えていますが、それを本作では寄生虫でやってしまうとは。やはり鬼才。

1989年にはOVA化されています。この1冊でハマったら、ぜひチェックしてみてください。


冒頭から「ドーン」。これが「ジョジョ立ち」の前身型!

バルバルバルバル…変身!

電子版ならでは。『ジャンプ』1984年45号で飾った表紙も拝める
(C)荒木飛呂彦/集英社