謎めいた世界に展開するSFバトルアクション

公開日:2013/1/18

GANTZ 〈1〉

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 集英社
ジャンル:コミック 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:奥浩哉 価格:500円

※最新の価格はストアでご確認ください。

SFは好きなジャンルだ。一番好きな作家は、カート・ヴォネガット。それからレイ・ブラッドベリ。フィリップ・K・ディック。マーク・トゥエインの『アーサー王宮のヤンキー』なんかも素敵である。なんて気取ったこといってないで、コミック『AKIRA』や、映画の『ガメラ三部作』がたまらなく好きと告白しちゃいたい。なんつってもスピード感と奇想にやられちゃうのである。

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『GANTZ』もSFアクションだといっていいと思う。

高校生の玄野計と加藤勝は地下鉄にひかれた直後、なにやら謎めいたマンションの一室にいる自分に気づいた。そこにはほかに6人の男と1匹の犬がおり、なによりも正体不明の大きな黒い球体が置かれていた。やがてGANTZと呼ばれる球体に命令され、どこやらの住宅街にテレポートされた8人は、ねぎ星人とかいう気色の悪い子供を殺すことになる。

でもってここからの怒濤の展開は喋らないのが花というもので…

『GANTZ』のおもしろさにはいくつもの要素がある。

GANTZが発する命令がすべてひらがなの、しかも「す」や「さ」などの文字が鏡文字に反転した、人を食った文面であること。
街中へ飛ばされるときに身につけるバトルスーツの魅力。
時間差で相手を破裂させる謎めいた銃器。
敵が破裂するときのグロテスクなまでの内臓感覚。
だがなによりも魅力的なのは、ここに描かれた「世界」の細部が不明なことだろう。

まずGANTZという物体、あるいは生物が分からない。エイリアンと推測されているが、ほんとうのところはなにものなのかまったく分からない。彼が死の寸前の人間を呼び寄せて、他の異星人とおぼしき生き物を殺させる目的も不明だ。拠点となるマンションの一室からじかに外へは出られない理屈も同様だ。人間がテレポートするシステムについても説明はない。

つまり、何が何だか分からない世界の中で、命がけの闘いに追いやられなければならない登場人物たちの不安感は、そのまま読み手にとっての不安感となって跳ね返り、強い緊迫感に姿を変えるのだ。そのストレスは、ある一定条件の中では、ほぼ快感となって読者のもとへやってくるのだ。


玄野と加藤は地下鉄で轢死するはずだった

気がつくとなぜかマンションの一室に

GANTZは人を食ったメッセージをおくってくる

GANTZから銃器を与えられる

気色の悪いねぎ星人(らしい)