日常系の会話劇だと思っていると、足下をすくわれるでござる
公開日:2013/1/27
も女会の不適切な日常1
ハード : PC/iPhone/iPad/Android | 発売元 : KADOKAWA / エンターブレイン |
ジャンル:ライトノベル | 購入元:BOOK☆WALKER |
著者名:海冬レイジ | 価格:450円 |
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どこからどこまでを日常系と呼ぶのか? その定義は難しいのですが、少なくともタイトルに『日常』とあるのだから、まあ日常系なんだろうな、と思っていました。
部活(も女会)で日常なんだから、軽めの音楽を扱ったマンガみたいなのとか、生徒会のあれこれを書いた小説みたいなのとかね。扉絵、目次を見たときも、まだ信じていましたよ。いや、だまされていました。これは「も女会」という、まぁハーレムみたいな部活の日常を切り取った連作短編なんだろうな、と。
それが、いい意味で裏切られるのは第3話あたりからです。第1話、第2話でだまされてますから。冗談みたいな展開で主人公のリンネくんが死んだって「どうせ次の章では何事もなく話は続くんだろ?」というような読み方をしてしまいます。ギャグマンガで雷に打たれたキャラクターが、焦げるんだけど次のコマでは復活している、みたいな感じでしょうかね。
ところがどっこい。悪夢でした、では済まない状況にリンネくんは陥っていきます。
「もしや日常系ではなく、昼ドロ系!?(日中に放映している主婦向けのどろどろした人間関係を描くドラマ)」と思いきや、さらにひっくり返されてSFに跳んだかと思ったら、最後は落ち着くべきところに落ち着くという設計。ちょうどジェットコースターに乗って、一周してきちんとプラットホームに戻ってきたような読後感はいいものですよ。
SF要素に関していえば、先人の域を出ていないというのはあるかと思います。が、著者本人も理解していない借り物言葉でお茶を濁すよりはずっと潔いと思うのですよ。それよりも、視点を切り替えるうちに読者を迷宮に誘い込む構成力で楽しませてもらいました。ラブコメのきわどい描写ではなく、ストーリーでドキドキさせられる作品は久しぶりです。
この扉絵で、日常ってタイトルなら誰だってお気楽ハーレムものを想像するよね?
目次にしても、変にかっこをつけていなくて油断させられます
冒頭の会話劇などは、複雑な構成をわざと隠しているかのよう
一般的な意味での死後の世界とは少し違うのだが、リンネくんの死後から物語は波打ちはじめる
リンネくんが死後、流れ着くのがアッパーグラスの世界