【映画公開中】東京のどの片隅にもありそうな家族のかたち
公開日:2013/2/8
東京家族
ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader | 発売元 : 講談社 |
ジャンル:小説・エッセイ | 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy |
著者名:山田洋次 | 価格:514円 |
※最新の価格はストアでご確認ください。 |
山田洋次という名前を見ただけで、ぐっときてしまうあなた。相当古い組に入ってきています。人情話を撮れば右に出るものはいない監督の原案ゆえ、手に取る前からちょっと泣けちゃう確信犯。東京家族という4文字もなぜか懐かしいような響きがします。
物語は瀬戸内海に浮かぶ小さな島からやってきた周吉ととみこが東京の息子たちの家に泊まることから始まります。医院を開業した長男の幸一。その妻で良妻賢母の文子。2人の子供たち。さばさばと何でも言い放ってしまえる性格の幸一の妹滋子。両親を迎えに行く駅を東京と品川と間違えてしまうほど頼りない次男の昌次。設定自体が「あ、うちと似てるかも」と思わせてしまう「キャラ立ち」はさすがです。
東京家族はなんといってもみな忙しい。久々の両親との再会もつかの間、皆動かせない用事や仕事でうまく老夫婦をもてなすことができない。実家の感覚も、ふるさとの感覚も忘れてしまった大人になった「子供たち」のおかしくてんやわんやな数日間の物語。その微妙なずれとお互いの間に確実にあるオブラートにくるんだような寂しさがせつなく漂います。が、さすが山田監督。きちんと「転」を作ってくれる。そういうところも、安心して身を委ねられる小説です。白石まみはテレビ作品を多く手がけているとあって、とてもわかりやすい、それでいて飽きない文体。山田洋次監督のスタイルにとてもマッチしているのではないでしょうか。「ほっ」、と温かい気持ちになれる作品。私は好きです。
頑固親父とダメ次男。ぶつかってばかりいたけれど
典型的な団らん風景もほっとします
台詞のひとつひとつがゆっくりしているのもいい