死刑囚たちの現実を真正面から描く問題作

更新日:2011/10/7

モリのアサガオ 1

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 双葉社
ジャンル:コミック 購入元:電子貸本Renta!
著者名:郷田マモラ 価格:315円

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「かつては世間を騒がせた犯罪者たちも、死刑が確定したあとにどんなことを考えどんな暮らしをしているのかなど誰も知らされていない。拘置所はまるで深い森の中にあるみたい」。これは主人公及川直樹の彼女、沢崎麻美の台詞です。

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死刑囚は頭髪も服装も自由、お金があれば好きなものを購入できる。償いの気持ちを持ち日々過ごしている者もいれば、反省もせずに自由気ままに過ごしている者もいる。死刑囚舎房に配属になった新人刑務官の及川直樹は、そんな死刑囚たちの自由気ままな日常を目の当たりにし、「あんな奴らは死刑になって当然だ」と思う一方で、何の予告もなく虫ケラ同然に処刑されてしまう死刑囚たちを見て動揺する。そして、「刑務官の仕事とは何なのか」「死刑制度とは一体何なのか」を考えはじめていく。そんな中、公判中の殺人犯、渡瀬満が直樹のいる拘置所に入ることが決まり…。新人刑務官と殺人犯渡瀬満、死刑を執行する者とされる者。そんな二人の心の交流を描きながら、死刑制度というものを真正面から捉え描いている問題作。

死刑制度が現在も当たり前のように存続されている日本。けれど、先進国の中では死刑制度が続いている国は少なく(日本、アメリカ等)、国際的には廃止の方向にある制度だと言う事を知っていますか? というか、そもそも死刑制度というもの自体がどんなものであるか、一度でも真剣に考えたことがある人が一体どれだけいるのでしょうか。

特に死刑制度自体に疑問を持っていなかった私は「人を殺したのだから、死刑になって仕方ない」と本当にただ漠然とそう思っていました。また死刑制度があることが犯罪抑止に繋がるとも。そんな私に、ベテラン刑務官の若林さんの「長い時間をかけて改心した人間(死刑囚)を殺してしまうことが、果たして正しいといえるのか」という台詞が突き刺さります。しかし「その言葉を被害者家族に言うことができるのか」ともどこかで思うのです。

死刑制度の是非はこの作品を読み終わった今でも私にはまだ出せていません。ただ、日本でこういう事が日々繰り返されているという現実に驚き、そしてまたこの事は多くの人が知るべき、考えるべき事実だと思います。

冒頭から衝撃のシーン。死刑を執行する者とされる者の間に芽生えた友情

刑務官の仕事は死刑囚の朝の巡回からはじまる

死刑囚たちの生活の想像とのギャップに悩む主人公

そしてここから、殺人犯渡瀬満と刑務官及川直樹の物語がはじまります