テガミバチはテガミを運ぶ…常夜の星で人々のこころを繋ぐために

公開日:2013/3/11

テガミバチ (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 集英社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:浅田弘幸 価格:399円

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薄暗い世界の空を背景に白い星のようなものがパラパラと降る、なんとも幻想的な表紙。美しいもの好きな女性なら思わず買ってしまいたくなる表紙の『テガミバチ』。話全体のプロローグのような1話目が、連載本誌である『ジャンプSQ(スクェア)』でなんと100ページを越える大ボリュームであったことからも、本作への期待度の高さが伺えます。

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世界の舞台は、アンバーグラウンドという常に夜の星。下等階級の街は首都の真上にある人工太陽の光からも遠く、年中暗いままです。おまけに街と街の間には鎧虫(ガイチュウ)という危険生物がでるため、人々は思う様に行き来できません。そんな暗く危険な世界を唯一行き来する国家公務員がいます。「テガミバチ」と呼ばれる、世界の人々が「こころ」をこめた「テガミ」を届ける郵便屋さんです。

本編は、下等階級の出身の少年ラグが「テガミバチ」であるゴーシュと出会うことから始まります。突如現れた男達に母を首都へと連れ去られたラグ。彼が出会ったゴーシュは、筋金入りの仕事人でした。なにせ左腕に配達伝票を貼られたラグに「品名、人・アルビス種・7歳・男・ワレモノ」「君の配達用紙、切手料金に不備は見当たりません。よってこれより君はテガミバチの配達物……『テガミ』としてあつかわれるのです」と言うのですから。もちろんラグも当初は彼に反発しますが、旅を共にするうちに少しずつ打ち解けていきます。しかし道中で鎧虫に襲われたりと、波乱万丈なテガミバチの旅路は読んでハラハラしてしまいます。

この作品でおもしろいのはやはり「こころ」と「テガミ」の関係。夜明けの無い暗い星で、まともに出歩けない人たちにとって、遠方からの息災を伝えるテガミにはまさしく「こころ」や「希望」、「願い」が込められた大切なものなのです。「テガミ」とされたことで母に捨てられたのでは、と心のどこかで思っていたラグも、テガミとなっていることで逆に母からの愛を示され泣き出していました。ラグはゴーシュとの旅を経て、「いつか、あなたのようなテガミバチになりたい」と決意します。これからテガミバチへの道を目指すラグにどんな冒険が待っているのでしょうか。相棒を得、まさにこれから始まるラグの冒険から目が放せません!


焼けたポストのそばで倒れているラグをゴーシュが見つけます。この世界では、届けるこころがこめられていれば人間でさえもテガミになってしまうのです!

テガミバチのマニュアルを決め顔で声高に読み上げるゴーシュ、彼の仕事人ぶりがうかがえる1コマ

旅の途中襲ってくる鎧虫! こんなのがごろごろいる世界だからこそテガミバチの重要性も高い
(C)浅田弘幸/集英社