【壇蜜主演映画の原作】じらされる快感にページがぐいぐい進むエッチ小説
更新日:2013/3/19
私の奴隷になりなさい
ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader | 発売元 : KADOKAWA |
ジャンル:小説・エッセイ | 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy |
著者名:サタミシュウ | 価格:496円 |
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書くのがむずかしい小説の双璧は怪談とポルノだろう。
怪談というのは、怖い出来事をそのまま書いてもちっとも恐ろしくない。「はい、そうですか」で終わってしまう。その怖さの芯まで読者を導いてくれるプロセスが最も大切なのだ。そっちの方が怪談の真骨頂といえるほどだ。日常的な風景からあり得ない怪事までグラデーションになって続いている皮膜を、波立たせないようにしかしダイナミックに破っていくには相当な筆力を必要とする。
ポルノグラフィもおなじだ。酸鼻を極めた酒池肉林を徹頭徹尾なぐり書いてもまるで駄目である。読んでも全然「来ない」。
日常的なリアリティを持った人間が、隠微な欲望の中に落ち、まみれていくのがいいのである。アダルトビデオなんかで最初にインタビューシーンがよく入っているのはこのせいだろう。
そもそもSEXというのは変わりばえのしないものである。10か15くらいのパターンを組み合わせを変えて繰り返してるだけではないか。それでも飽きないのは、私たちの心の深いところに言いしれぬ暗い欲望があって、それが秩序正しい「社会」の中に突出してくるからである。
ポルノ小説もおなじだ。人間の深部におりて、そこにわだかまる艶めかしいものをわしづかみ、日常の中に浮かび上がってくるとき、忌まわしいくらいのリアリティを発揮する。
なにを書くかより、どう書くかがきびしく問われるのが怪談とポルノなのだ。
その意味では、『私の奴隷になりなさい』は、よくできている。壇蜜主演の映画も見てみようかと思わせた。
出版社に中途採用された「僕」は所属した部署の歓迎会で香奈という女性に出会う。プレイボーイの彼は彼女を落とそうと近づくがすげなくフラれてしまう。しかしますます彼の欲望のつのるある日、「今日、セックスしましょう」というメールが彼女から届く。しかしその誘いには罠が仕掛けられていた。「僕」はめくるめく情欲の世界に引きずり込まれていく。
この小説では、「じらす」というテクニックが巧みに駆使されている。香奈は、自分の方からしか誘いを許さないし、それはかなり間遠だ。またセックスの主導権も彼女がすべて握っている。ひたすらじらされる「僕」の欲求は耐えがたいまでに高まっていくし、それにつれて読み手の中の香奈に対する、つまり「幻想の女」に対する欲望もどんどんかき立てられていく仕組みになっている。
ひさびさに「来てみたい」とお考えの諸氏にささげる。
歓迎会の席上で初めて香奈に出会った
とつぜん、香奈から誘惑のメールが来た
香奈からの誘いは謎だった
SEXしている私をビデオで撮ってほしい、と香奈はいった