人気ホラー作家が見聞した、不安なエピソード99話!

小説・エッセイ

公開日:2013/3/24

現代百物語

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : KADOKAWA
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:岩井志麻子 価格:540円

※最新の価格はストアでご確認ください。

人間、生きていると「あれは一体何だったんだろう?」と思わず首をひねりたくなるような、奇妙な体験のひとつふたつはあるものだ。

別段ゾッとするような体験ではない。ただ何となく不思議で、奇妙で、どことなく不気味な体験(そう、今あなたの頭にふっと思い浮かんだ、そういう体験のことです)。それはまるで喉に刺さった小骨のように、記憶の片隅に居坐りつづける。

advertisement

本書『現代百物語』はそうしたエピソードを99話並べたものだ。著者の言葉を借りるなら「とても怖い話、ではない。明らかな心霊系、オカルト的な怪異はあまり取り上げてはいない。身近なそこはかとなく不安な話、なんとなく妙な話、を集めた」という1冊である。

美しい夜桜の描かれたブローチを作りつづけている死刑囚。有名な本や作家をまったく知らない「自称・読書家」。原稿を描こうとしない漫画家志望。何から何までやる気のない、不味くて高い食堂。著者のもとにかかってきた「秘密の集会」への誘いの電話。デリヘル嬢を恐怖させた異様な客――。

本書に登場するのはサスペンス映画に描かれているような、凡人離れしたサイコキラーではない。ちょっとした虚栄心や悪意がもとで「普通」から半歩踏み出して踏みだしてしまった人たちだ。

詐欺で巻きあげたお金をヒモに貢いだり、人気女流作家になりすましたり、というエピソードには「こういう人はいるよなあ」と頷き、綺麗なルームメイトを強盗に襲わせようとした女のエピソードには「人間って怖い……」と暗澹とした気分になる。

著者が天性の聞き上手・話上手であることはもちろんだが、その根底にあるのは人間の弱さに対する深い洞察だろう。怪談ファンはもちろん、テレビなどでの過激な言動から、著者を「ただのスケベなオバハン」(本文中にある言葉です。念のため!)と思っている人にも一読をお薦めしたい。デビュー以来、人間のマイナス面を凝視しつづけてきた作家・岩井志麻子のすごさの一端がきっと伝わるはずだ。


目次より。興味をそそられるタイトルが99並んでいる

目次つづき。「嘘をいわない彼女」はオススメの1話

第5話より抜粋。これもイヤーな話です

著者の前に現われた女性が、この後衝撃のひとことを…

「コンコンばあさん」は老婆の言動が印象的

1話は短いのですぐ読めちゃいます