心を閉ざす少女を救うのは、真っ直ぐな心を持つ少年のエロスだった!?

公開日:2013/4/15

琴浦さん (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : マイクロマガジン社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:えのきづ 価格:699円

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人の心が読めてしまう主人公の琴浦さんが、裏表のない真鍋くんや先輩・クラスメートのおかげで周囲との壁を徐々に取り払っていくお話。先日アニメの放映が終わったばかりですが、「毎回最終回」と言われるほど、毎話緩急のある見事な構成だったように思います。原作コミックとはエピソードの順番が違っていたり、エピソードそのものが一部変更されていたりしますので、アニメと原作とでは違った楽しみ方ができるでしょう。

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人の心が読めるキャラクターというのは、妖怪サトリをはじめとして昔からよく用いられる題材です。「勝手に心が覗かれてしまう」という気味悪さから、嫌われ者になってしまう場合が多いように思います。琴浦さんの場合、転校してきた当初から自ら嫌われ者になろうと振舞います。人の心は読めるけど、自分の心は閉ざしてしまっているのです。人の心が読める能力というのは、その気になれば読める「能力が制御できる」パターンと、周囲の思考が勝手に流れ込んできてしまう「能力が制御できない」パターンがあります。琴浦さんは後者です。心の声と口に出して喋っていることが区別できないため、幼い頃から周囲との軋轢が絶えなかったようです。それが原因で、家庭も崩壊してしまっています。表紙の可愛い絵とは裏腹に、重く暗い設定です。

そんな琴浦さんの心を開かせるのが、「エロスの貴公子」真鍋くんです。冒頭からしばらく重く暗い話が続くのですが、琴浦さんが本当に心が読めるのかを試すため、わざとエロい妄想をして琴浦さんを怒らせます。エロい妄想をするのは高校生くらいの少年なら当たり前のことだと思いますが、エロい妄想をしていることを他人に知られてしまうというのは、普通なら恥ずかしいし嫌だと思うのですよね。ところが真鍋くんは、表裏のない真っ直ぐな性格をしているので、心を読まれてもぜんぜん気にせず琴浦さんに近づいていきます。閉ざしている琴浦さんの心に、どんどん踏み込んでいきます。周囲にからかわれようが邪魔されようが、意に介しません。

結局、そういう真鍋くんの行動は、琴浦さんに惚れているからだったわけです。恋愛感情や友情によって、琴浦さんの心は溶かされていきます。無表情だった琴浦さんが、喜怒哀楽さまざまな感情を表に出せるようになっていきます。シリアスな場面で見せる泣き顔や笑顔の表現が、非常に印象的です。重く暗い設定ですが、ほどよいギャグとエロスにニヤリとできる作品だと思います。


クラスから孤立する琴浦さんと、最初は声をかけるのをやめた真鍋くん

無神経なことを言って琴浦さんを怒らせる真鍋くん

エロスの貴公子誕生

嫌われ者を演じていたのだと知った真鍋くん

巻頭にはなんと特別付録が!って、これはギャグ
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