24歳で被害に遭った著者自身が語る最低・最悪の性犯罪の事実

更新日:2014/9/25

性犯罪被害にあうということ

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 朝日新聞出版
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:小林美佳 価格:400円

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僕は基本的に本を読むのが早い方だと思う。通常の束の文庫本であればおおよそ2~3時間で読み終わるし、ちょっとした長編でも1~2日もあれば充分。だけど、この作品はちょっとばかり読了までに時間を要した。

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『性犯罪被害にあうということ』。ショッキングだが、あまりに直球なタイトル。そして、作者は24歳で性犯罪被害にあったという女性。表紙には作者の写真。内容は実名の手記。現実に起こった出来事である。

どうして読むのに時間がかかったのかというと、各所で「いたたまれなさ」が頂点に達し、読書を続けることが困難になってしまったからに他ならない。なぜなら、ここで扱われる事件は「レイプ」。殺人にも劣る最低・最悪の行為であり、どんな犯罪よりも事後に後を引く類のもの。実際にこの作品も犯罪行為そのものについての記述は冒頭の数ページのみであり、ほとんどがその後の“生活”の厳しさについて書かれている。さながら、地獄である。

残念なことに僕は男性である。こういった犯罪の場合、根本的に加害者にしかなれない立場であり、であるが故に作者の心の深い部分にまで浸食した傷に本当の意味で共感することができない。赤裸々に、そして明確に綴られる作者自身の言動はあまりに痛ましいのだが、それに対して「手に負えない」と感じてしまう自分も確実に存在する。作者と直接関係のない僕がそう感じるくらいなのだから、作者及びその周囲の人間の心情はいかほどのものなのか。陳腐な表現になるが、想像を絶するほど過酷であったのだと思う。

理解できたことがあるとするのなら、性犯罪被害の傷は簡単には癒えない、ということと、これはやはり最低の犯罪である、ということ。親兄弟や親しい友人に相談することさえ憚られ、結果ひとりで抱え込む他に選択肢のない状況が発生する。助けようにも、周囲にはその方法すらわからない。そうやって被害者の心の傷はどんどん拡がって行く。

そんな状況に対し、事実と気持ちをただ淡々と、しかし力強く書き記した作者に敬意を表したい。この事件、正直一例に過ぎないと思うのだが、その一例を世に出す勇気があるところが凄い。

そういう一例が少しでも多く存在しないと、誰も「理解」へのきっかけが掴めない。おそらく作者もそのことをちゃんと理解していて、相当の覚悟を持ってこの本を世に出したのだと思う。

僕と同じように、「いたたまれなさ」を感じる人は、男女を問わずにいることと思う。読み進めるのは厳しいし、正直言えば作者に対してちょっとした憤りも感じた。ただ、少なくとも僕は読了後に「理解したい」と思った。これは紛れもない事実である。

きっかけには間違いなくなる。必要な方は、この事を念頭において最後まで読んでほしい。


驚いたことに表紙は作者自らのワンショット、ある種の決意を感じる

淡々と綴られる事実と心情描写、実録手記ならではのリアルさ

BookLive!リーダーのユーティリティ画面、意外に便利なのが下段バーにしおり位置が表示される機能

設定項目は多岐に渡るのだが、文庫見開き表示のような設定ができれば尚良

文字色・背景色は全部で4パターン、黒白表示にすると緊迫感が増す
(C)小林美佳/朝日新聞出版