常識を凌駕する「現実」に打震える

地を這う祈り

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android 発売元 : 徳間書店
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:石井光太 価格:1,728円

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この作品は「泣ける」「笑える」「ハラハラドキドキ」といった、あらゆるアイコンを拒否する。常識的な本につけられるアイコンは、彼の著作にはまったくそぐわないのだ。

この本は、『物乞う仏陀』や『神の棄てた裸体』など発展途上国の取材すらされない貧困層の人々や、東日本大震災の遺体安置所をめぐる極限状態に迫った『遺体』といった、なかなかメディアに取り上げられない内容をテーマにしている著者の「写真集」。であるので、半分は目を背けたくなるような写真といっても過言ではない。

写っているのは、より多くの喜捨を集めるために怪我をさせられたり手足を切断された子供の物乞い、亡くなって打ち捨てられた少女売春婦の死体、施設の檻のなかに閉じ込められた障害者など。あまりにも悲惨な写真ばかりなので、やや健康そうに見えるストリートチルドレンや不発弾を使って作られた穀物倉庫の写真に少しほっとしてしまうほどだ。

著者の作品は、経済大国で(原発等理不尽なこともあるが比較的)安全に守られて暮らしている私たちを驚かせ、海外渡航危険度の高い地域における大暴落しきった人命の値段について考えさせる。なぜそのような取材をするようになったか、動機はこの作品の冒頭に書かれている。それはあまりにもセンチメンタルな文章ではあるのだけれど。過酷な現実を私たちにつきつける冷徹さと文章のセンチメンタリズムの不思議なギャップ。それは、現地で怒りと戸惑いを感じながら写真を撮った著者と、そののち日本で文章を書いている著者との間に生じる齟齬であるようにも感じられる。

著者のノンフィクションをセンセーショナリズムと批判する人もいるそうだ。しかし途上国では、私のような一介の旅行者ですら、取材されているような物乞いを見かけることがある。彼らが存在する以上、これらの写真をセンセーショナリズムと片付けて目を塞いでよいものかどうか。作品を挑戦的だと感じるのなら、それがもたらす「現実」を受け止めきれないだけなのかもしれない。


眼球を失った物乞いの少女から逃げ出した体験から、ジャーナリストになったという

ほかの章が悲惨すぎるのでこんなにも過酷な現実が比較的ましに見えてしまう

苛烈な状況を撮ることについて。ラスト近くの著者への14の質問も読み応えがある



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