ついに電子化! 有川浩が描く、ロクデナシの成長!

小説・エッセイ

公開日:2013/5/28

フリーター、家を買う。

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 幻冬舎
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:有川浩 価格:665円

※最新の価格はストアでご確認ください。

小さい頃は無限の可能性があったはずなのに、大人になった今、何もなくなってしまったような気がして寂しい。スーパーマンになるはずの自分がどんどん普通の人間になってく。出来るならば、働きたくない。許されるならば、ずっと親の脛を齧っていたい。誰にも指図されずに自由気ままに暮らせたらどんなに良いだろうか。安っぽいプライドを抱えながら、そんな甘い妄想をしてしまうのは、私が井の中の蛙だからか。家族の支えを当たり前のように思ってしまっているからだろうか。もし、急に家族が病気にかかったら?もし、急にお金が必要な事態になったら?現実が迫ってきたら、さてどうしようか。

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『フリーター、家を買う』の主人公・武誠治は、大学を卒業後どうにか就職したものの、プライドの高さ故に3ヵ月ほどで会社を辞めてしまったフリーターだ。そんな誠治に父親は毎晩激怒、口論ばかり。唯一誠治をかばう母に対しても彼は辛く当たってしまっていたが、彼は怠惰なフリーター生活を辞められないでいた。だが、そんなある日、母が重度のうつ病になってしまう。今まで気がつかなかった母親の苦悩に気づかされた誠治は一念発起、バイトに就職活動に母の看病にと奔走することになる。

どんなアルバイトでも続かなかった誠治が長く続けた工事現場のアルバイト。土方のおじさん達と話しながら、気づかされる家族それぞれの想い。母の看病を通して、バラバラだった家族が少しずつ一つになっていく。言い訳ばかりして何も出来なかった誠治は少しずつ、でも、着実に変わっていく。この出来事で多分誠治は初めて大人になれたのだろうか。成長していく姿が眩しい。

両親とちゃんと向き合えているだろうか。大切に出来ているだろうか。プライドばかりを気にして、自分のことだけ考えていたりはしないか。この本を読んでいると、ちょっぴり反省させられる。そして、成長する誠治を見ると、自分もしっかりせねば、頑張らねば、と思わされる。終盤からは有川作品ならでは胸キュンなラブコメ展開も。全ての大人に読んでほしい1冊。


入社3ヵ月で仕事を辞め、フリーターの誠治。父親との喧嘩が絶えない

いつの間にか母は重度のうつ病に

時給の高さから道路工事のバイトを始めた誠治。いつの間にか周りの土方の人たちが良き相談相手となっていた

母親の看病の中で父親との距離がだんだん近づいていく。家族の絆は取り戻せるのか!?