映画化されてないマル秘話! 男臭いハードボイルド小説!

小説・エッセイ

公開日:2013/5/30

探偵はバーにいる

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 早川書房
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BookLive!
著者名:東直己 価格:617円

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夏の日の、体育の授業後の教室みたいに汗臭いし、終電間際の電車内のように酒臭い。本作は、むせ返るほどの男臭さを感じる小説だ。シャーロック・ホームズ、明智小五郎、浅見光彦、名探偵コナン、金田一少年。世の中にはあらゆる探偵がいるが、これほどまでガサツな探偵も珍しい。裏社会に精通し、博打で生計を立てる。風俗にももちろん行くし、酒も無限に飲む。暴力沙汰も日常茶飯事。だが、情に人一倍もろく、内にアツさを秘めている。女の私には到底できないことばかりやらかすが、なぜか羨ましく思ってしまうし、心惹かれてしまう。

本作は、東直己氏の「ススキノ探偵シリーズ」の第1作であり、彼のデビュー作だ。大泉洋主演で映画化された『探偵はBARにいる』の原作は、次作『バーにかかってきた電話』であり、『探偵はBARにいる2』の原作は、第5作『探偵はひとりぼっち』。本作は映画に描かれた前に主人公が担当した事件を知ることが出来る。1980年代半ば当時の時代感が感じられる1冊だ。

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今回、札幌の歓楽街ススキノで探偵兼便利屋をしている“俺”の元に舞い込んできた依頼は、行方不明になった恋人を探して欲しいというもの。大したことがなさそうな依頼に当初は全く気乗りのしなかったのだったが、先頃起こったデートクラブ殺人と関係があることが分かってくる。ススキノ、という歓楽街を舞台に繰り広げられる、主人公とその協力者たちの男同士の友情も、何だか微笑ましい。ベタベタし過ぎず、ガサツそのものなのだが、その付き合いは信頼し合っているからこそできるもの。彼らの協力を得ながら、事件の謎に迫っていく。

酒と暴力、暴言、そして、女。泥臭さがありつつも、ススキノの街を奔走する主人公は必見。映画を見た人も見ていない人も楽しめること間違いなしだ。


舞台はススキノ。小説の最初には地図がついている

大学の後輩、原田から依頼がもたらされる。行方不明の恋人を探してほしいようだ

被害者の人物像を想像しながら、情報を仕入れていく

男には厳しく、女には優しく。男らしい探偵のハードボイルド小説だ
(C)東直己/早川書房,