【今夜ドラマスタート】 社会のタブーに果敢に挑む、相場英雄の話題作!!

小説・エッセイ

公開日:2013/6/16

震える牛

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:BookLive!
著者名:相場英雄 価格:767円

※最新の価格はストアでご確認ください。

2000年代初頭。世界を震撼させたBSE問題は、当時小学生であった私の記憶にも新しい。日本中がおののき、流通業界は混乱し、私は愛する牛肉をしばらく食べることができなくなった。BSEに感染した牛は初期症状として「震え」が出るらしい。これは「震える牛」を軸に、様々な社会のタブーに切り込み、さらには問題に関わる人間のドラマまで見事に描いた、言ってしまえば贅沢極まりない作品である。ぜひご一読いただきたい。

 

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2年前、中野駅前の居酒屋で金銭が奪われ2名が殺害される強盗殺人事件があった。犯人は不明。この捜査に任命された警視庁捜査一課継続捜査班の田川真一は、当初断定されていた不良外国人による犯行という筋読みに疑問を感じ、独自の捜査を開始する。

捜査が進むうちたどり着いたのは、食品加工会社のミートボックス。田川はミートボックスと殺人事件の関係に着実に迫る。一方、記者の鶴田真純はとある決意を胸に、ミートボックスの食品偽装疑惑を追っていた。事件を暴こうと奮闘する警察と記者、利益のため隠ぺいを重ねる企業、殺された2人の謎。様々な要素が絡み合い、徐々に事件は明らかになる。

  

小説を読んで「勉強になる」と感想を述べるのは、とてもためらわれる気がする。勉強という言葉は、しばし芸術性を無視したような、無感動な印象をはらむからだ。しかしこの場合、堂々と、素直にそう言うことができる。「勉強になる」ことが最大の目的であり、また著者は相当な勉強をしてこの作品を描いたはずだからだ。参考文献の量には驚かされた。勉強のための本なんて、さらさら読む気にはなれないそこのあなた、安心して手に取るといい。作品の世界に引き込まれ、繰り広げられるサスペンスと人間ドラマを楽しむうち、知らぬ間に自身の問題意識が喚起される。

万人が楽しめる、社会派サスペンス・ヒューマンドラマであるこの作品は、現代に生きる私たちに強く訴えかける。何気ない生活に潜む諸悪の影。私たちはそろそろ、動きださねばならないのかもしれない。


これは事実なのだろうか。物語の中に垣間見えるリアルに思わず凍りつく

消費者の存在も忘れてはならない

物語の要となる、重要なシーンだ
(C)相場英雄/小学館