『いつかティファニーで朝食を』のマキヒロチが描く、11の日常系ほんわか短編集!

公開日:2013/6/19

旅する缶コーヒー

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 実業之日本社
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:マキヒロチ 価格:648円

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「とりあえずビール」と言うよりも、黙って自販機で缶コーヒーを選ぶ背中が好きだ。120円で買えるほろ苦さ。いつでもどこでも同じ、ほっとする味わい。缶コーヒーを手にすることは、大人にとってごく当たり前の日常なのかもしれない。だが、その缶コーヒーを巡っては、毎日多くのドラマが繰り広げられていることだろう。

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本作は、マキヒロチの初の短編集。缶コーヒーがある風景を描いた、ヒューマンドラマのオムニバスだ。旬を過ぎて田舎へ帰る元グラビアアイドル。会社の同期に惹かれているサラリーマン。山登りに出かけた2人の山ガール。母親に複雑な感情をもつ少女。夫の浮気を疑う妻。友人の葬式で再会した同級生……。11編のショートストーリーが展開されている。

広島、京都、東京、ロンドン等、様々な街を舞台として缶コーヒーとともに繰り広げられるストーリーは彼らの何気ない日常だ。だが、かけがえのない、忘れてはならないような光景だと感じる。

例えば、長野県八ヶ岳で繰り広げられる2人の山ガールの物語では、主人公が親友への複雑な感情を吐露している。女同士だからこそ、一番身近にいる存在だからこそ感じる嫉妬。本音で語り合いたいという苛立ち。山の頂上で缶コーヒーを飲みながら、2人は何を語り合うのだろうか。缶コーヒーは人を落ち着かせる。人の本音を引き出し、人と人とを結びつけてもくれるのだろう。様々な街を旅しては、缶コーヒーは、人の悲しみも喜びも切なさも見ている。

この短編集は、缶コーヒーのような身近さがあり、心地良い余韻を与えてくれる。読むとほっとする。味わい深さが心に染み渡る。透明感溢れるタッチで描き出されたこの1冊は、ぜひ大人にこそ、読んでほしい。


缶コーヒーの味わいに、初恋の人を思い出す元グラビアアイドル

缶コーヒーをきっかけに、同僚と仲良くなったサラリーマン

山へ登りながら、本音を話してくれない親友にイライラする山ガール

旦那の浮気を疑い、旅行を楽しめないでいる妻

友人の葬式後、思い出話にひたる学生時代の仲間たち。どの話のキャラクターにもリアリティがあり、思わず感情移入してしまう
(C)マキヒロチ/実業之日本社