地獄からの漫画。日野日出志ワールド全開の傑作があなたを殺す!

公開日:2013/6/26

地獄変 (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : マガジン・ファイブ
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:日野日出志 価格:400円

※最新の価格はストアでご確認ください。

推理小説では、様々なトリックや事件、そして犯人像が存在しております。そして、中でも特異なのが“読者が犯人”というもの。作品名をあげることは避けますが、「読み進める事そのものが犯行だ」等と、登場人物に読者が告発されるといったような具合です。フィクションと現実の融合を試みたアプローチといいましょうか、アイディアへの飽くなき探求には、只々感心してしまいます。
…しかしながら、それでもまだ踏み込んでいない領域があったんですね。

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―――読者を殺す。
日本が誇る恐怖マンガ界の重鎮、日野日出志先生はマンガでもって、読者を殺害せんとするのです。

さて、本作で語られるのは、地獄絵に魅せられた画家の一生。芥川龍之介の地獄変とその点は通じていますが、それ以外は全くの別物であります。彼は毎日、大量の血反吐をはいて絵を描きます。あるときは、自分の体を切り刻みながら、絵を描きます。それが絵の具になるのです。血液を絵の具とし、地獄絵は描かれます。

「血が肉を語っている! 肉が血を呼んでいる!!」

―――窓を開ければ断頭台、火葬場、傍らを流れるのは血の川。どす黒い空にはカラスがギャアギャア鳴いています。
死刑囚の悲鳴がこだまし、腐臭の漂うアトリエで、彼は地獄絵へ熱情を傾けるのです。彼は、血走り焦点の定まらない目つきで、これまでの傑作を順ぐりに語り始めます…。

あせらずとも、数ページもめくれば、地獄はすぐそこです。冒頭から加速し続けるショッキングな描写は、地獄を描いたというより、“地獄で描かれた”というほうがしっくりくるのかもしれません。モノクロのどっしりとした画面から噴き出す、色鮮やかな狂気。蛆虫の這いまわる腐乱死体から漂う臭い。むせ返るような血の匂い。それらの生々しさと言ったら…!

漫画界において問題作といわれたジョージ秋山先生の“アシュラ”。本作はある種それよりも過激です。あるいは、これが地獄界における、漫画のスタンダードなのかもしれませんが…。

きっと読み始めたら最後、忍び寄る地獄に、殺されてしまうことでしょう!


怖い!

すでに怖い!

なんかもういろいろ怖い!
(C)Hideshi Hino